動画制作

「講談で語る社史動画」:伝統芸能で企業カルチャーを発信する方法とは?

企業の沿革や創業ストーリーをまとめた「社史」は、大切な情報である一方、堅苦しくなりがちです。年表形式では見てもらえず、冊子にしても読まれない。それを解決する手段として「講談」があります。三味線ではなく張り扇、滑舌よくテンポある語りで、創業の逸話や社長の苦労話が劇的に変化。伝統芸能のリズムに乗せて語られることで、最後まで見たくなるコンテンツに昇華します。

和のセット+脚色で“距離感”を縮める

講談で語る社史動画の特徴は、セットと語りのトーンにあります。背景は和風の屏風や畳、登場人物の名前はあえて少し変えてみるなど、堅い内容にユーモアのスパイスを加えることで、「身近さ」が生まれます。講談師が語ることで、“これはちょっと脚色された話”と伝わるため、笑いも許容されやすくなります。

社史の伝え方比較 従来の冊子 講談動画
難易度 高い 低い
読了率/視聴率 低い 高い
社員・若手の関心 薄い 興味持つ
外部発信効果 ほぼなし SNS等で話題に

“語り”がもたらす共感と想像力

ナレーションやインタビュー形式では伝えきれない“想像力”の余地があるのも講談の強みです。表情、声の強弱、間の取り方で、同じ内容でも印象がまったく変わります。視聴者は話の展開を頭の中で映像化するため、より深く内容を記憶します。記憶に残る=企業イメージも残る。社史が「覚えてもらえる」状態になるのです。

他企業との違いを打ち出す“文化戦略”

B to BでもB to Cでも、自社のユニークさを伝える時代です。競合他社が多い中では、文化発信が新たなブランディング軸になります。講談で語る社史は、「ウチはまじめだけど、遊び心もあるよ」という信号。社外に対してはもちろん、若手社員にも“面白い会社”という印象を残せます。YouTubeや採用動画としても有効です。

動画化のポイント:やりすぎず、崩しすぎず

最後に講談社史動画を制作する際の注意点です。

  • 内容はリアルに、表現は少しだけ大げさに
  • 時間は3〜5分でコンパクトに
  • 法被やのれんなどの小道具で和風感を演出

とくに「演出」と「事実」の境界は曖昧にせず、あくまで“事実ベースの娯楽”というスタンスを守ることが、信頼感を損なわない鍵となります。

「講談で語る社史」は、情報の伝達手段としてだけでなく、企業のカルチャーを“にじませる”新しい表現方法です。語りの間、セットの雰囲気、ユーモラスな構成によって、「最後まで見てもらえる社史」に変わります。まじめさと遊び心の絶妙なバランスで、視聴者に“覚えてもらえる会社”を目指してみませんか?

自社法被で踊るだけ?盆踊り動画が企業認知に効く?

毎年各地で開催される盆踊り大会。地域住民にとっては馴染み深い行事ですが、近年は“企業プロモーションの場”としても注目されています。理由は単純。音楽とリズムに合わせて多くの人が一斉に身体を動かすことで、「空気が動く」のです。そこで企業が加わると、静的な広告とは違い、自然と視界に入る。踊りの持つ“開かれた雰囲気”が、地域と企業の距離を縮めてくれます。

“踊る企業”が与えるポジティブな印象とは

企業の役職に関係なく、同じ動作をしている姿は、見る側に安心感を与えます。特に自社の法被やTシャツを着て参加することで、「この会社、地域に根ざしてるな」「人がいい会社かも」という印象が自然に残ります。ここでのキーワードは“一体感”。広告のような押しつけではなく、“感じさせる”PRになるのです。

視線を集める:法被、ロゴ、動作の一致

気づいてもらうには、目立つ色と動きが重要です。法被にロゴを入れるだけでなく、踊りの中に手を振る・回すなどの大きな動きが入ることで、ロゴや社名がより目立ちます。下の図は、人の目線の動きとロゴの露出頻度を関係づけたものです。

【社員の踊る動作】 → 【観客の視線が集まる場所】 → 【そこにロゴがある】 → 【ロゴが印象に残る】

(例:手を大きく広げる)→ (胸元や背中に視線集中) →     (法被のロゴ)   →   (認知される)

  • 踊りの動き:特に大きな動作(手を振る、回るなど)は観客の視線を自然に引きつけます。
  • 視線集中の部位:多くは、上半身(胸元や背中)に集まります。
  • そこにロゴ:法被やTシャツの背中や胸にロゴがあると、視線とロゴが一致。
  • 結果的に記憶される:踊りが終わった後も、印象に残りやすくなる。

動画に残すことで、地域外にも波及する

実際に盆踊りで撮影した映像は、短く編集することで企業紹介動画にも活用できます。注目すべきは、“その場で見た人”だけでなく、“あとから観た人”にも伝わる点。SNSや採用ページ、展示会での使用など、利用の幅は意外と広い。動きのある映像は言葉より先に印象を残します。

成果につながる「巻き込み型プロモーション」へ

踊ることで巻き起こるのは、視線だけではありません。現場の社員自身の表情、地域の人との掛け合い、笑い声。それらすべてが「この会社の空気」を表現する素材になります。広告でよく使われる“演出”ではなく、“そのまま”の姿だからこそ伝わるものがある。参加型であるがゆえに、他者を巻き込む力が備わっているのです。

踊りの持つリズムと一体感、そして動作による視線誘導が、企業ブランディングに効果的に働く理由です。さらに映像化することで、地域外へも自然なかたちで企業の姿勢を届けることが可能に。広告とは異なる、親しみと信頼の作り方がここにあります。

声に出して言いたい!地元グルメの名前が持つ“拡散力

「じゃこ天」「かっぽ酒」「きりたんぽ」「まめぶ」…名前を聞いただけで、口に出したくなるこの不思議な感覚。最近、地元の“ちょっと変わった名前”の食べ物がSNSで注目を集めています。背景には、音声とビジュアルを活かした「発音チャレンジ系動画」の存在があります。本記事では、なぜこの形式がバズるのか、その構造と可能性を掘り下げます。

なぜ“変な名前”がバズるのか?

「知らない」×「言いにくい」が引き起こすシェアの連鎖。
珍しい地名や食材名が話題になる最大の理由は、“知らないもの”への反応が、視聴者に印象を残すからです。加えて、「言いにくい」という要素が加わると、「自分も言ってみたい」「誰かに教えたい」という心理が働きます。これは「情報の共有欲求」に直結しており、コメントやシェアを誘発する強いトリガーになります。

発音チャレンジ×ご当地グルメ動画の構成案

ただ紹介するだけじゃない、“参加型”にする仕掛けがあればいいでしょう。

下記は、動画構成の基本フォーマット例です。

セグメント 内容
①イントロ 地元の紹介&食べ物の名前を提示(テロップ強調)
②発音チャレンジ ナレーターが3回挑戦、言い間違いやリズムの変化で笑いを誘う
③実食パート 商品の魅力や由来を紹介(視覚的に)
④視聴者への呼びかけ 「あなたも言える?コメントで挑戦してね!」と投稿促進

こうした構成で、視聴者を「見る側」から「参加する側」へと巻き込みます。

映像の“音声設計”がカギを握る

発音チャレンジ動画では、BGMよりも「人の声」と「テンポ感」が重要です。なぜなら、ユーザーが覚えたり真似したりする際、耳に残るのは「語感」だからです。発音に抑揚をつけたり、リズムを取り入れることで記憶に定着しやすくなります。また、字幕の表示タイミングやフォントも動画のテンポに合わせて設計すべきポイントです。

観光・地域ブランディングとの相性

地元食材の名称がバズることで、観光にも副次的な効果をもたらします。現地でしか食べられないという希少性が話題を呼び、体験価値に変換されていくのです。特に「言葉×味×場所」という三点セットは、オンラインでは完結しきれない魅力を持ちます。地元の商工会や観光協会がこの流れを戦略的に活用するケースも増えてきています。

「名前のクセ」が人を動かす、新たな地域動画戦略へ

発音しにくい、でもなぜか声に出したくなる。そんな“クセのある”地元グルメの名前が、動画という形で全国に拡がっています。単なる紹介にとどまらず、言葉遊びと文化紹介を掛け合わせることで、視聴者の参加と共感を誘発する新しいスタイルが生まれました。今後の地域発信では、“言いたくなる名前”に注目した動画施策が、思わぬ広がりを見せるかもしれません。

社員から社員へ贈る“感謝の動画”が、社風を変える

感謝の言葉は、伝えたいと思ってもなかなか口に出せないもの。とくに職場では「照れくさい」「タイミングがない」と、伝え損ねてしまうことが多いのが現実です。こうした“言えなかったありがとう”を伝える手段として、動画の活用が静かに広がっています。短いメッセージと社員の素顔をつなげることで、言葉以上の気持ちが伝わるのです。

感情ではなく、“文化”を伝えるツールとしての動画

感動を狙う演出よりも大切なのは、動画に映る「人と人の距離感」や「普段の空気感」です。誰かが退職する際の“寄せ書き的なコメント動画”が、結果的にその会社の関係性や価値観を浮き彫りにします。つまり、社内動画は感情の共有にとどまらず、「この会社って、こんなふうに人と接してるんだな」という“社風の可視化”にもつながります。

活用シーン:誕生日・異動・退職だけじゃない

感謝動画といえば、退職時の贈り物や誕生日サプライズを思い浮かべがちですが、実際にはもっと多様な場面で活用されています。たとえば「プロジェクト終了時」「新人歓迎のタイミング」「産休・育休からの復帰祝い」など。小さな節目に合わせて動画をつくることで、習慣として“感謝を表現する文化”が根づいていきます。

制作する際の工夫と注意点

動画は必ずしも編集技術が必要というわけではありません。スマートフォンで撮った自然な映像に、簡単な字幕とBGMを加えるだけで十分。ただし注意したいのは、話す内容のトーンと、映る場面の選び方です。たとえば「業務中のシーン」を入れることで、“働く様子”が自然と伝わります。形式より“その人らしさ”を意識しましょう。

動画がもたらす“空気の変化”とは

こうした動画が日常に組み込まれてくると、社内の会話のトーンが変わります。普段あまり話さなかった人が動画で登場することで、「あの動画、良かったよ」と自然に声をかけるきっかけになります。これは、業務外のコミュニケーションを促す一種の“社内潤滑油”とも言える現象です。
下図のように、動画施策がもたらす変化は段階的に進行します。

導入フェーズ 内容例 期待される変化
スタート期 退職や異動の送別動画 感謝文化の芽生え
定着期 誕生日やプロジェクト完了動画 小さな関係性の活性化
浸透期 年間ルーティン化された感謝動画 社内の空気感・定着文化に

社員から社員へ感謝を伝える“サプライズ動画”は、単なるプレゼントではなく、社内に「気持ちを言葉にする」文化をつくる一歩になります。映像に映るのは人柄よりも、その会社の“空気感”。誰かの言葉が動画になることで、職場に見えないつながりが生まれていく。形式ではなく、「続けやすさ」と「素直さ」を大切にした動画文化の導入が、社風をじわじわと変えていくのです。

地方の“謎マナー”動画がウケる理由と映像化のコツ

SNSで地方の奇妙なルールが話題になるのは、人が“自分の常識”を揺さぶられると、つい反応してしまう心理に関係しています。たとえば「家の前にカエルの置物を置かないと不幸が来る」といった言い伝え。科学的根拠はなくても、その土地の人にとっては常識。この“ギャップ”が好奇心を刺激します。

YouTubeやTikTokでは、「信じられない風習」「住んでみて驚いた地元の掟」などが高い再生回数を誇ります。コンテンツとして「理解不能」な要素をあえて残すことが、逆にユーザーを引き込む仕掛けになるのです。

映像化される地域文化とルールの実例

たとえば、「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」という迷信が今でも言われることがあります。あるいは、特定の色ののぼり旗を立ててはいけない地域、ゴミ出しの曜日が“住民会のルール”で月ごとに変わる地域も。

これらは文章で読むより、実際の現場や住民の声を映像で伝えることでリアルさが際立ちます。視聴者は「本当にそんなことが?」と疑いつつも、実際に存在する現地の雰囲気に驚き、つい最後まで見てしまうのです。

「変わったルール」は差別化のきっかけになる

多くの自治体や観光プロモーション動画は「自然の美しさ」「伝統行事」を紹介する傾向があります。しかし、他と似た印象になりやすく、視聴者にとっては“どこかで見た風景”に感じられがちです。

一方、「地元では電柱を指さすのは禁止」「公園で逆立ちすると怒られる」など、少し突飛に思えるルールは、強い印象を残します。視聴者の記憶に残ることで、地域への興味や検索行動につながりやすくなるのです。

共感より“違和感”

このジャンルでの動画制作では、視聴者の「共感」を得ようとするより、「違和感」に注目することがポイントです。撮影では、映像にナレーションを足すより、住民のリアルな会話や風景の音を残す方が“現地感”が出やすいです。

また、「なぜそうなったのか」を説明しすぎず、あえて疑問を残す構成も有効です。
視聴者が「調べてみたくなる」余白を残すことで、SNSでの拡散が期待できます。

ビジネス活用の可能性:地方創生と観光PR

観光動画に“奇抜なローカル文化”を取り入れることで、他の地域との差別化が図れます。特にインバウンド観光では、日本独自の風習に関心をもつ層が多く、「なぜそんなルールがあるの?」という反応が好まれます。

【図:海外視聴者に人気の文化要素ランキング】

ランキング 内容
1位 食文化のタブー
2位 日常生活のマナー(靴・挨拶)
3位 地域ごとの風習
4位 言い伝え・禁忌

ユニークな文化を紹介することは、ブランド力強化だけでなく、地方自治体のPR素材としても有効です。

「バズる地方ルールの秘密」は、文化的な“ギャップ”にこそあります。映像を通じて「自分とは違う常識」を垣間見る体験は、視聴者の関心を強く引き寄せ、拡散にもつながります。奇抜なルールや風習は、地域の魅力を再発見する視点でもあり、観光PRや自治体動画の切り口として活用する価値があります。「共感される」ではなく、「気になって調べたくなる」動画作りを目指すことが、今後のコンテンツ戦略のカギになるでしょう。

食べる前に満足?「一口で終わる動画」が刺さる心理

YouTube ShortsやInstagramリールなどで増えている「一口だけ食べて終わるグルメ動画」。調理の過程や全体のレビューを省略し、“一口目のリアクション”にフォーカスした動画が、フォロワーの関心を集めています。食べる前の期待、口に入れた瞬間の表情、それだけで視聴者は「味がわかった気」になれる。このシンプルな構成が支持を集めているのです。

なぜ「一口目」だけで満足できるのか?

人間は初めての刺激に最も敏感に反応します。これは「初頭効果」と呼ばれ、最初に得た情報がその後の評価に大きく影響するという心理法則です。一口目の反応をリアルに見せることで、「おいしさ」が最もダイレクトに伝わる。視聴者はその一瞬で“擬似体験”を得るため、長いレビューや説明が不要なのです。

SNS視聴スタイルと“短尺化”の相性

以下の図をご覧ください。

プラットフォーム 平均視聴時間 人気の尺
TikTok 約10秒 5〜15秒
Instagram Reels 約15秒 7〜20秒
YouTube Shorts 約20秒 10〜30秒

このように、SNSでの主流は「ながら見」や「スキップ前提」の視聴スタイル。フル尺動画では途中離脱が起きやすい中、「最初の一口」に集中した構成は視聴完了率が高く、アルゴリズム的にも有利に働きます。

映像制作におけるポイント

「一口だけ動画」を制作する際のポイントは以下の通りです。

  • 撮影アングル:食材と顔が同時に映る“斜め45度”の構図がベスト
  • 編集:余白や前置きはカットし、「口に運ぶ→リアクション」だけで完結
  • 音声:咀嚼音や食器の音をクリアに拾うと、没入感が増す
  • 字幕:セリフは最低限。「うまっ」「なにこれ!?」程度で充分

このような構成にすることで、1本5〜10秒でも十分に「伝わる」動画に仕上がります。

「一口で終わる飯動画」が人気を集める背景には、視聴者の変化と心理的満足感の短縮化があります。第一口という“最も強いリアクション”だけに焦点を絞ることで、短時間でもインパクトを残せるコンテンツが成立しているのです。SNS時代の映像表現として、「食べる前に伝わる」動画スタイルは今後さらに進化していくでしょう。

なぜ「文化×ルーティン」動画が海外で注目されるのか?

SNS上で話題を呼ぶ動画ジャンルの一つに「ルーティン動画」があります。特別な演出や派手な展開はなく、淡々とした日常を切り取った映像。それが海外で注目を集める理由は、心地よさに加え、「他者の暮らし」に対する純粋な好奇心があるからです。
特に日本の文化や伝統に根ざした職業の日常は、視聴者にとって“見慣れない美しさ”として映ります。

和菓子職人・銭湯・祭りの準備──選ばれる題材の共通点

海外で人気を博す「文化×ルーティン」動画には、ある共通点があります。それは「手作業」「反復」「儀式性」の3つです。
例えば、和菓子職人が餡を包む様子は繊細で整然としており、銭湯の開店準備には長年の流儀が感じられます。さらに、地方の祭り準備などは、地域の文化や世代を超えたつながりが自然に映し出されます。こうした“意味を含んだ日常”が、文化的価値として国境を越えるのです。

題材 魅力のポイント
和菓子職人 精密な手仕事、美しい色彩
銭湯の開店準備 清掃や準備の所作に現れる歴史と習慣
地方の祭り 集団の協働、地域性、非日常への準備感

映像がもたらす“映像の密度”とは?

文化や習慣は言葉で説明しにくいものですが、動画では非言語の情報が濃密に伝わります。たとえば、朝6時に店を開ける銭湯の湯気や、手ぬぐいを絞る手の動きには、映像・音・時間の積層があります。
この「情報の密度」こそがルーティン動画の強み。無言であっても、観る者に多くの“背景”を想像させるのです。説明を排し、手元や音、時間の流れに任せることで、文化が伝わっていく──それが評価されています。

視聴者が共感する「対比」としての動画

都市部で忙しく働く海外ユーザーにとって、日本の伝統的なルーティンは対比的に映ります。効率やスピードを求められる社会に対し、「ゆっくりと、丁寧に、同じことを繰り返す」姿は、どこか安心感を与える存在です。
この“癒し”としての機能が、スローライフ的映像表現と共鳴し、視聴を後押しします。あえて字幕やBGMを減らし、空間の音や自然な時間経過を重視する手法も評価されています。

見せるのは「意図」ではなく「営み」

こうした動画を制作する際のポイントは、映すべきは意図や説明ではなく、「営みそのもの」です。視聴者は情報を“理解する”のではなく、画面から“感じ取る”体験を求めています。
例えば、和菓子を完成させることが目的ではなく、包丁の研ぎ、布巾の折り方、茶の準備──そのすべてが動画の要素になります。重要なのは、「文化を演出しないこと」。ありのままの日常にこそ、本質が宿るのです。

文化紹介とルーティン動画の融合は、海外視聴者にとって“異国の日常を垣間見る体験”として親しまれています。手仕事や準備の所作といった非言語の情報は、言葉以上に多くを伝える力を持っています。
今後、海外発信を見据えた動画制作では、「意味を込めず、丁寧に日常を映す」という視点がより重要になってくるでしょう。

なぜ“仕事の中身”を見せる採用動画が支持されるのか

採用動画といえば、社員の笑顔やインタビューが中心でした。しかし、「社員紹介では物足りない」という声が若い求職者の間で増えています。
特に、営業・エンジニア・カスタマーサポートなどの職種では、「実際にどんな業務をしているのか」が見えにくいことが不安要素になっているのです。

「優しそうな人」「雰囲気がいい会社」だけでは、入社後の働く姿が想像できない──。そのためには、仕事内容を可視化した“役割紹介動画”がいいでしょう。

「営業職って何するの?」を映像で可視化

採用活動において、「営業って、結局どんな仕事ですか?」という質問は非常に多く見られます。
そこで企業が活用し始めているのが、“業務の流れ”を1分前後の動画で見せる「役割紹介動画」です。

たとえば以下のような構成が効果的です。

動画の流れ 内容例
出社〜朝礼 一日の始まり、チームでの情報共有
午前の訪問 クライアントとのやりとり(実写 or 再現)
昼休憩 オフィス周辺の雰囲気も含めて紹介
午後の提案 提案書の作成やミーティングの様子
終業・報告 日報や退勤までのルーティン

実際の社員を起用することで、人物の雰囲気も自然に伝わります。

役割紹介動画が持つ3つの効果

  1. 業務のイメージが明確になる
    職種ごとの“働き方のリアル”を見せることで、求職者の理解度が格段に上がります。
  2. ミスマッチを防ぐ
    「入社前に思っていた仕事内容と違う」という早期離職リスクを下げる効果もあります。
  3. “働く現場”への関心を高める
    単なる会社紹介ではなく、「この仕事、やってみたい」と思わせる入口になるのが役割紹介動画の強みです。

注意したいのは“業務紹介”と“作業紹介”の違い

役割紹介動画で注意すべきは、「作業の手順説明」になってしまうことです。
求職者が見たいのは、「どんな目的で・どんな価値を提供する仕事か」という視点です。

ただPCに向かっている様子や書類に目を通している場面だけでは、働く意味が見えてきません。
大切なのは、業務の背景やチームでの連携、判断ポイントなど“仕事の全体像”を伝えることです。

役割紹介動画は“人柄”も伝える

「仕事内容を見せると、人物的な魅力は伝わらないのでは?」という心配もありますが、実は逆です。

役割紹介を丁寧に描いた動画には、言葉以上の人間性がにじみ出ます。
真剣に業務に向き合う表情、丁寧な対応、仲間と話す時の雰囲気──。これらが「この人と一緒に働きたい」と思わせる材料になるのです。

無理に「社員の魅力を見せよう」とするよりも、仕事を通して伝わる“素の姿”のほうが、視聴者には信頼感を与えるのです。

採用動画の主役が「人柄紹介」から「役割紹介」へと変わりつつあります。
求職者が本当に知りたいのは、その職種で自分がどんな風に働けるのか。営業や開発、サポートなど、それぞれの業務を可視化する1分動画は、想像力を補い、ミスマッチを防ぐ有効な手段です。
さらに、役割紹介を通して伝わる“自然な人柄”もまた、企業に対する信頼を醸成します。これからの採用動画は、「何をする仕事か」を軸に据えることで、より深く共感を得るものへと進化しています。

なぜ選ばれるのか?取引先が語る“逆方向”の会社紹介動画

パンフレット、Web、そして映像。企業紹介の手段は進化を続けていますが、その多くが「自社目線」で作られています。
「我が社はこういう理念で…」「こんな実績があって…」という説明は、事実であっても、どうしても宣伝色が出てしまいます。

評価される理由は、他人が語る方が伝わる

つまり、なぜこの会社と一緒に仕事をしているのか?」を取引先や協力会社が語るという構成。
サービス内容よりも、関係性や人柄、信頼感といった“見えない価値”が伝わるため、
営業資料や採用動画に流用しやすく、使い回しも効きます。

特に中小企業やB to B企業では、「数字より信頼」が重視される場面が多く、第三者の声は想像以上に響きます。

具体的にどうつくる?動画構成のポイント

この手の動画はインタビュー形式が王道ですが、いくつか工夫があります。

構成要素 内容例
導入 「最初に出会ったのは◯年前」など関係の起点
転機 協力を決めたきっかけ・迷いが晴れた瞬間
継続理由 今も頼りたいと感じる“人”の魅力
現場の話 営業や担当者の些細な対応エピソード
未来への期待 今後どう一緒に進んでいきたいか

スーツ姿の座談会ではなく、現場の空気を活かすロケ撮影や、字幕による補足も有効です。
語るのは取引先でも、“編集は自社の意図に沿って整える”ことができます。

なぜ共感されるのか?視聴者心理の変化

SNSやレビュー文化の影響もあり、現代の消費者・求職者は「他者の評価」に敏感です。
「この会社を選んだ理由」を他人が語ることで、視聴者は自分がその立場になったときのリアルを想像しやすくなります。

特に、採用向け動画では「社内の雰囲気」よりも「外から見た信頼感」に惹かれるという声も多く、候補者が入社後の関係性を具体的にイメージしやすくなるのです。

制作時に注意すべき点

この動画は、インタビューを依頼する時点で信頼関係が試されます。
・「言わされてる感」が出ないよう、無理な台本は避ける
・インタビュー相手に事前に方向性を共有する
・編集で過度に“美談”にしない

また、一社だけでなく複数社の声を組み合わせることで、視点の偏りを防ぎ、より多角的な印象を与えられます。

信頼は“他人の言葉”で生まれる

会社の魅力を自分で語るのもいいですが、信頼されている姿を「取引先の言葉」で可視化することで、営業・採用・広報のあらゆる場面で“空気感の伝わる”素材が生まれます。

過剰な演出ではなく、「ありのままの関係性」を映すこと。
それこそが、今の時代に響く動画の条件なのかもしれません。

「文化を売る」動画戦略|理念を伝える中小企業の新しい選択肢

多くの消費者は「モノ」そのものより、「それを買う理由」や「共感できる思想」に価値を感じています。たとえば、環境配慮・地域密着・働き方など、“企業の考え方”に惹かれて選ぶ傾向が強まっています。

大企業ではすでに、こうした企業理念を軸とした広告戦略が進行中で、このアプローチを中小企業でも取り入れています。

商品紹介だけでは届かない“感覚”の領域

いくら高性能の商品でも、「他と同じように見える」状態では印象に残りません。そこで重要なのが、“言葉にしづらいけど感じられる価値”です。
たとえば、

伝え方の違い 受け取られ方
「高品質な木材を使用」 → スペック情報にとどまる
「木のぬくもりを暮らしの中心に」 → 暮らしの情景が浮かぶ

この“情景”や“哲学”を伝える手段として、詩的表現を含んで動画を制作すればいいでしょう。

詩的動画とは何か?映像表現の変化に注目

詩的動画とは、直接的な説明や売り文句を抑え、音・間・言葉・映像で余白を残しながら企業の考え方を伝える動画です。

  • セリフやナレーションが最小限
  • 静かな風景や日常を切り取る
  • 詩的なキャッチコピーで思想をにじませる

まるで“読後感”のように、視聴後に余韻を残すのが特長です。

中小企業が取り入れるための3ステップ

「予算がない」「自社には早い」と感じる中小企業でも、以下の3ステップで取り組むことができます。

企業理念を文章で明文化する
→「自分たちは何者で、なぜこの商品を届けたいのか」を言語化。

動画の中に“語らない余白”をつくる
→ すべてを説明せず、“感じてもらう”構成にする。

日常の風景や、想いのある製造過程を映像化する
→ 例:朝、工房のシャッターが開くシーンから始める。

理念を映像化する際に考えるべきこと

企業理念は、社内では当たり前のことでも、外から見ると伝わりづらいものです。
動画にする際は、“誰に”“どんな気持ちで”伝えたいかを明確にしておく必要があります。

また、詩的な表現に偏りすぎると何も伝わらない危険もあるため、「映像に一本、芯が通っているか?」を撮影前に確認しましょう。

中小企業こそ考えるべきなのは、単に“商品を売る”のではなく、“文化や思想を伝える”というアプローチです。詩的動画はその手段のひとつであり、スペックでは伝えきれない「考え方」や「空気感」を届けることができます。理念を明文化し、語りすぎない映像を作る。この新しい選択肢が、共感されるブランドづくりの第一歩になるでしょう。