映像制作

「情報」より「実感」|日用品動画が共感を呼ぶ

複数の商品を一気に紹介する動画も便利ですが、「ひとつだけ」丁寧に語る動画スタイルがあります。情報の取捨選択が求められる時代において、「これだけ見ればいい」という明確さが、視聴者の心理的負担を減らします。

特に日用品ジャンルは、生活に直結するリアルな体験が求められます。たった1アイテムであっても、使い勝手・頻度・手触りといった“主観的な実感”が詰まったレビューは、視聴者の共感を得やすいのです。

情報より“にじむ感情”が信頼を生む

最近の視聴傾向を分析すると、「スペックの説明」よりも「なぜ気に入っているのか」「どう使っているのか」といった個人の“視点”に関心が集まっています。

たとえば「音が静か」「掃除が楽」などの表現も、数値で説明されるより、“話し方”や“表情”、“沈黙のタイミング”などから自然と伝わるもの。いわゆる“感情の余白”が動画の中にあると、視聴者は「演出されていないリアル」を感じやすくなります。

動画の構成は「前置き → 使用 → 感想」が基本

ミニレビュー動画の基本構成は以下の3ステップです。

段階 内容 ポイント
①前置き どうして買ったのか 必要性と背景を軽く触れる
②使用 実際の動作を見せる 動画だからこそ“動き”で伝える
③感想 良かった点・微妙な点 主観を率直に言うのが信頼の鍵

このように、派手な編集やBGMは不要。視聴者が求めているのは「あなたもこれを使ってるんだ」という身近さです。

ミニ動画ならではの「視聴完了率」効果

1本あたり30秒〜1分程度で収めると、視聴完了率が高まりやすくなります。SNSでの共有・保存・リアクションのきっかけにもなり、拡散性が高いのが特徴です。

また、シリーズ化しやすいという利点もあります。たとえば「月曜の1品」「洗面所アイテム特集」など、テーマ別で蓄積していけば、ブランドや個人アカウントの“視点”が浮き上がってきます。

商品紹介の域を超えた“ライフスタイル発信”へ

このスタイルの動画は、ただの商品紹介ではありません。「誰が、どんな場面で、なぜそれを使っているのか」を表現することで、その人の暮らしに触れたような感覚を得られます。

これは企業チャンネルでも応用可能です。社員が自分のおすすめを紹介するだけでも、その人の個性や社風がじんわり伝わります。

情報の“最小化”が信頼の“最大化”につながる

「買ってよかった日用品」を1アイテムずつ丁寧に紹介する動画は、情報を絞り込むことで逆に注意を惹きつけ、信頼を高める手法です。ミニマルな構成、主観的な語り、自然な表情。その積み重ねが、商品ではなく“暮らしの実感”を届けてくれます。

商品を売るのではなく、誰かの生活を紹介する。その延長線上にこそ、動画が生み出す信頼と好感があるのではないでしょうか。

子どもの“まちがい”は学びの入口!?教育×動画

例えば、子どもが「カレーパンマン」を「カレーごはんマン」と言ったとき、大人は笑いながらも温かい気持ちになります。
こうした“まちがい”には、正しさよりも本人なりの理解や記憶の努力が垣間見えます。
それが可愛らしさを超えて、見る者に安心感や発見をもたらす理由です。
単なるエンタメではなく、“思考の軌跡”を可視化する教育コンテンツとなります。

間違いを叱るのではなく、共有する時代へ

教育の場では「間違えないこと」に重きが置かれてきました。
しかし、現在は「間違えた経験から何を学べるか」にシフトしています。
子どもの言い間違いや描き間違いを動画で捉え、本人にも見せることで、「自分で気づく力」を育てることができます。これは、評価のための記録ではなく、共感のための記録なのです。

親も先生も“学び手”になれる動画の活用法

子どもが“まちがい”をした瞬間に、その背景を振り返るのは意外と難しいものです。
動画で記録しておくことで、後から親や教育者が冷静にその様子を見直すことができます。
以下は具体的な観察ポイントです。

観察要素 見るべきポイント
発語の瞬間 言葉の選び方、間のとり方
表情 緊張か自信か、戸惑いか
手元の動き 書き間違い、描き直しの仕草

大人も子どもも「あとで一緒に見る」ことが、会話の糸口になります。

SNSで動画が人気を集める理由

TikTokやInstagramで、「子どもの言い間違い」「お手伝い失敗」などがバズる傾向が続いています。
これには単に「かわいい」だけでなく、視聴者が“自分の記憶と重ねる”という現象が関係しています。
「自分もそんなふうに失敗していた」と思い出すことで、動画は笑いとともに記憶の共鳴を引き起こします。

“まちがい”の記録が育てる非認知スキル

注目される教育分野の1つに「非認知スキル」とうのがあります。
これは「自己肯定感」「やり抜く力」「柔軟な思考」といった、テストでは測れない力のこと。
“まちがい”を動画で肯定的に扱うことは、子どもにとって「まちがっても大丈夫」という心理的安全性を育てます。これは個々の思考プロセスを大切にする教育の土台です。

子どもの“まちがい”は、大人が見逃しがちな「成長の芽」です。
動画でその瞬間をとらえることで、教育にも感情にも通じる多層的な価値が生まれます。
笑いながら見られる、でも奥にあるのは“どう考えて、どう間違えたか”という思考の記録。
教育現場や家庭での活用はもちろん、SNS世代にも受け入れられる新しい教育コンテンツとして、今後ますます広がりが期待されることでしょう。

片付け動画の整然とした映像美

音楽もナレーションもない。定点カメラが淡々と片付け作業を映すだけ。それにもかかわらず、最後まで見てしまう「片付け動画」には、“変化の快感”があります。
Before(散らかっている)→ After(整っている)という構造は、視聴者に「進行と達成」の感覚を与えます。
これは、心理学でいう“コンプリート報酬”に近い感覚です。人は、完成や区切りに達すると脳内で快楽物質が分泌されると言われています。

“定点視点”がもたらす安心感と集中

片付け動画の多くは、動きの少ない定点カメラで構成されます。
これが実は、見ている人にとって心地よさを生む大きな要素。
カメラが動かない=視点が安定していることにより、余計な情報や変化に気を取られることがありません。
視覚に入る「変わる部分」が限定されるため、自然と作業に集中でき、「没頭して見てしまう」現象が起きます。
これはASMRやスローライフ動画にも共通する“視覚の安心感”に基づくものです。

無音であることの戦略的価値

片付け動画は多くが“無音”か、ごく控えめな環境音だけです。
この設計は、作業や家事の「ながら視聴」を意識しているとも言えます。
一方で、ミュートでの再生が基本となるSNSでは、“音がなくても成立する構成”が圧倒的に強いのも事実。
さらに、無音の映像は、見る人それぞれの「内面の音」を呼び起こします。
たとえば、見ているうちに自分の部屋を片付けたくなる。
つまり、音を排することで“気づき”や“内省”を促す副次的効果も生んでいるのです。

応用展開:文化や企業活動にも活かせる

このフォーマットは、個人の生活シーンに限らず、企業や地域文化の発信にも応用可能です。
たとえば「和菓子屋の開店準備」「伝統行事の道具整理」など、動きの美しさや整えるプロセスを映せば、日常の中にある“リズム”や“哲学”を自然に伝えることができます。
視点を変えれば、どんな現場にも“片付けの美学”は存在します。

片付け動画が人を惹きつけるのは、単なる清掃の記録ではなく、“整っていく過程”が生む快感と静かなドラマにあります。
視覚の安心感、無音の集中力、そして変化の可視化。これらが織りなす動画は、SNS時代の新たな「癒やしのメディア」として定着しつつあります。
ビジネスにも応用できるこの手法は、日常を見せるだけでなく、価値を“整えて伝える”力を秘めています。

いつもの自販機が映す、街の変化と人の記憶

街の風景は日々変わっていきますが、自販機のような“動かないもの”は、その変化を映す定点観測点になります。
通勤者、学生、高齢者…その自販機の前を通る人の顔ぶれや時間帯によって、街の暮らしぶりが見えてくるのです。
特に、カメラを固定して長期間撮影すれば、通りの“音”や“速度”まで記録され、単なる風景を超えた街の記録となります。

季節で変わる飲み物が、街の空気を伝える

自販機の魅力は「買われたもの」が残ること。
夏はスポーツドリンク、冬は缶コーヒー、春と秋は微妙に違うお茶が選ばれていく。
その選択の積み重ねが、地域の気候や人々の好み、そして生活時間のリズムを浮かび上がらせます。

下記のように、売れ筋変化の可視化も可能です。

人気商品 購買者層
1月 あったかいコーンスープ 高齢者、通勤者
7月 炭酸水・冷茶 学生、子育て中の親
11月 微糖缶コーヒー 建設関係の男性多数

「何を買ったか」から「誰が、なぜそのタイミングで買ったか」まで読み取れるのが自販機観察の面白さです。

“いつもの場所”が誰かの心の支えになっている

同じ時間、同じ銘柄の缶コーヒーを買いにくるサラリーマン。
毎週末、親子で立ち寄るスポーツ帰りの小学生。
このような“繰り返し”が生まれる場所として、自販機は意外にも感情の寄りどころになっています。
何気ない習慣のなかに、仕事のプレッシャーや家族の関係、孤独や癒やしが見えてくるのです。
動画として記録すると、その人の“背景”が自然と滲み出ます。

 “美しさ”より“記録性”

SNS時代の動画は、完璧な構図や映像美よりも「正直な記録性」が価値を持つようになっています。
自販機動画はその典型例。
映像に語りがなくても、BGMがなくても、視聴者は「そこにある空気感」に惹かれます。
それは、街の記憶を他者と共有できる小さなドキュメントです。

“いつもの自販機”を定点観測するだけで、街の風景、人の動き、季節の流れ、習慣の連なり…さまざまな要素が可視化されます。
自販機動画は、ただの飲み物販売機ではなく、「街と人の記憶装置」になり得る存在。
その記録には、美しさよりも、リアルな暮らしの息づかいが詰まっており、何気ない風景のなかに、じわりとした感情の揺らぎが見えてきます。

主役は“物”?人を映さずに心を映す日常動画の魅力とは

YouTubeやInstagramで、“人を映さない日常動画”があります。これは登場人物の顔を映さず、むしろ食器や靴、バッグ、机など、物たちの存在感にフォーカスするスタイル。なぜこのような表現が今支持を集めているのでしょうか。

ひとつの背景にあるのは、「過剰な演出」への反動なのかと。キラキラした日常や意識の高いライフスタイルへの疲れから、より淡々としたリアルに人々が惹かれる傾向があります。主観や感情を排し、「そこにあるだけ」の存在を淡々と切り取る姿勢が、逆に視聴者の想像力を刺激しているのです。

“物の目線”が描く生活の奥行き

これらの動画では、「物」が静かに語りかけてきます。たとえば、毎朝使うマグカップの温度の変化、通勤前にそっと置かれる革靴の存在感、日々ページがめくられていく手帳の質感。こうした細部は、見落とされがちですが、実はその人の習慣や価値観を雄弁に物語っているのです。

人が語らないからこそ、モノの語るストーリーが深く心に残る。物に宿る記憶や時間の蓄積に、私たちは無意識に共感し、心を寄せているのかもしれません。

顔出し不要、誰でも始められる制作スタイル

“物視点動画”のもうひとつの魅力は、制作のハードルが低いこと。顔を出す必要がないため、表現に対する心理的ハードルが下がり、個人でも気軽に発信できるジャンルとして人気が高まっています。

また、カメラを手に取りやすい位置に置き、視線を下げて撮影するだけでも新鮮な映像が撮れるのが特徴。編集もシンプルで、BGMを最小限に抑えることで、物音や生活音が自然とリアルさを演出します。

企業活用の可能性も広がる

この“物主役動画”は、たとえば製造業の作業台の上に置かれた工具の動き、ホテルの客室に置かれたグラスやインテリアの風景など、「無言のブランディング」として企業が取り入れるケースも見られます。

特に海外視聴者にとっては、日本的なミニマルな映像美や静けさに価値を見出す傾向もあり、商品やサービスの間接的な魅力発信として活用できる可能性があります。

 “見せない”からこそ伝わる感情

視聴者の想像を引き出すのは、常に“余白”です。人を映さず、言葉も多用しないスタイルは、見る側に「感じさせる力」を委ねる表現です。

たとえば以下のような映像パターンは、非常にシンプルながら印象に残ります。

シーン構成 映像内容例 表現効果
朝の食卓 湯気の立つ味噌汁と並んだ茶碗 日常の温度、静かな始まり
通勤準備 並べられた靴と整った鞄 規律や出発前の緊張感
書斎の机 万年筆とコーヒーカップの静止画 思索や余白の時間

こうした映像の中に、“語らないからこそ伝わる感情”が宿っているのです。

「人を映さず、物を通して日常を描く」という動画表現は、今の時代に求められる“静かなリアル”を映し出します。派手さよりも、生活の輪郭や習慣のにじみ出る物たちの存在感にこそ、視聴者は癒しと共感を感じているのです。

制作ハードルが低く、個人から企業まで応用可能なこのアプローチ。あなたも身の回りの「物」にそっとカメラを向けてみてはいかがでしょうか。そこには、語られない物語がきっと存在しているはずです。

会社紹介動画は4分類で考える|目的別の使い分けとは?

企業の情報発信が動画にシフトしておりますが、「何を伝えるか」「どう見せるか」はいまだ模索中の企業も多いでしょう。とくに「会社紹介動画」と一括りにされがちなジャンルでも、目的や視聴者のフェーズによって最適な構成は異なります。この記事では、会社紹介動画を4タイプに分類し、それぞれの特徴と導入メリットを整理します。

タイプ①:全体像を掴ませる「自社紹介」動画

概要を短時間で伝えるこの形式は、新卒採用や展示会、営業先の初回訪問など、接点の入口で重宝されます。構成は、社歴・事業概要・強み・拠点などを2〜3分でまとめるのが一般的。

特徴 詳細
主な目的 初見ユーザーに“全体像”を伝える
構成要素 企業理念/事業領域/沿革など
活用シーン 採用、展示会、営業資料など

過剰な演出よりも「わかりやすさ」と「視認性」が求められます。アニメーションやナレーションで情報整理するのも有効です。

タイプ②:具体的な理解を促す「事業紹介」動画

単なる「何をしている会社か」ではなく、「どう取り組んでいるのか」まで踏み込むのがこの動画。特定のサービスや製品にフォーカスし、事例やプロセス、社会的意義まで見せることで、購買・取引の意欲を引き出します。

例えば、製造業なら工程の可視化、IT業ならUI画面とともに導入メリットを解説する…といった具体化がカギです。

タイプ③:距離を縮める「インタビュー」型動画

代表・社員・顧客のリアルな声を届ける形式は、温度感のある発信に適しています。特に、採用やBtoB商談の中盤以降で「信頼できる会社かどうか」を判断する材料として機能します。

社員の雰囲気、現場の空気、リーダーの言葉遣いなど、文章では伝えきれない“人格的要素”を伝える場として効果的です。

タイプ④:共感を生む「ドキュメント」風動画

もっとも感情に訴える形式がこのタイプ。実際の仕事風景、研修の様子、イベントの裏側などを追いかけることで、「この会社で働く・関わるとはこういうことか」という生活実感を伝えることができます。

編集は控えめに、余白や間を活かした構成が特長。視聴者が“観察者”として入り込めるため、採用でも営業でもエモーショナルな関係性を構築できます。

会社紹介動画は、「誰に・何を伝えたいか」によって構成を柔軟に変えるべきです。全体紹介、事業深掘り、人物インタビュー、ドキュメント風、これらは使い分けではなく、組み合わせて活かす“編集術”とも言えます。動画を一本で済ませようとせず、視聴者の行動段階に合わせて最適な形で届ける。この設計こそが、動画戦略の本質といえるでしょう。

“製品の余白”を描く動画が心に残る理由

プロモーション動画というと、製品のスペック、デザイン、機能性をクローズアップする手法が主流でした。しかし近年、そのスタイルに限界が見え始めています。
製品単体では差がつきにくくなった今、視聴者が知りたいのは「このモノが、どんな時間や空間に存在しているのか」。つまり“文脈”です。

そしてこの“文脈”を描くことで、無機質な製品が突然、生きた存在として感じられるようになります。

余白とはなにか?製品を囲む「関係性」に目を向ける

“余白”という言葉は、単に製品を見せないという意味ではありません。
製品に「触れる人」「置かれている空間」「時間の流れ」を主役にすることで、その製品が「生活や感情の一部」であることを自然に表現できます。

たとえば以下のような演出です。

要素 表現例
製品を使っている手元のみを映す/会話の中で登場する道具として使われる
空間 製品が“置かれているだけ”の静かな部屋の映像
時間 朝~夜まで、製品の周囲で流れる時間を定点で記録する構成

このような映像では、製品が語らない分、視聴者の想像力が自然に働きます。

静かな動画が残す“温度”|見えないものが伝わる設計

製品をあえて“説明しない”動画は、一見するとインパクトに欠けるように思えるかもしれません。
しかしその静けさこそが、見る人に“温度感”や“雰囲気”を伝えます。

たとえば、誰もいない部屋の中でゆっくり回る加湿器。その映像に説明は一切ありませんが、「この製品はどんな時間を作るのか」が伝わります。

こうした動画が与えるのは、「機能性」ではなく「空気感」という、言葉では語れない体験です。

 “見せない演出”がブランド価値を上げる理由

これは単なる映像美の話ではありません。“余白を描く動画”には、企業がモノづくりに対してどれだけ誠実であるかという姿勢も滲み出ます。

・説明しすぎない
・押しつけない
・見る人の想像を信じている

こうした姿勢は、視聴者に「この会社、信頼できるかも」と思わせるきっかけになります。
特に感性重視の若年層やクリエイティブ職層には、高く評価されやすい表現方法です。

 “製品そのもの”から“製品がつくる世界”へ

動画の役割が「伝える」から「感じさせる」へと変化している今、製品を中心に据えず、むしろ背景に置くことが、かえって強い印象を生み出すのです。

以下の図をご覧ください。

【図:製品プロモーションの構造比較】

従来型 余白型
製品=主役

機能・特徴を説明

製品=場の一部

生活と感情を記録

この違いが、ユーザーの“感情への接続”を大きく左右します。

動画で製品を語るとき、主役にしすぎないことが逆に印象を深める。
“余白”を描くことで、製品が日常の一部として自然に馴染み、結果としてブランドの信頼感を底上げすることができます。今、企業が目指すべき動画は、語らないことで伝える表現なのかもしれません。

プロセス動画が企業の信頼をつくる理由

製品の製造工程や開発背景を紹介する“プロセス動画”が人気ですが、その範囲は「モノ」にとどまらなくなっています。例えば、企画段階や意思決定の現場をそのまま公開する“社内の舞台裏動画”です。

表に出ることのなかった「考え方」や「葛藤の過程」が、企業の姿勢や価値観として、ユーザーの心に届く新たな接点となっているのです。

なぜ「意思決定」を見せることが価値になるのか

企業活動の“裏側”は、消費者にとっては未知の世界です。たとえば、ある製品が発売されたとして、その背景にどんな議論があったのか、どんな案がボツになったのかを知ることで、単なる商品が“思想の結晶”として見えてきます。

下図のように、プロセス動画が与える印象は、単なる完成品よりも強く残る傾向があります。

 

完成品のみを見た視聴者 開発プロセスを見た視聴者
「いいモノだな」

「完璧に創られてる」

「人間味があって応援したくなる」

「苦労や意図が伝わってきた」

撮るべきは“整った現場”ではなく“考え中の現場”

意思決定の動画を撮る際に重要なのは、「演出しすぎないこと」です。会議中の迷いや、方向性が揺れる場面こそが視聴者にとってはリアルです。

とくに若い世代ほど「完成された説明」よりも、「まだ答えが出ていない模索のプロセス」に興味を持ちやすい傾向があります。これはSNSのライブ配信文化や、舞台裏ドキュメンタリーが支持される流れとも一致しています。

どんな企業が活用すべきか

プロセス動画は、特定の業界に限らず幅広く応用可能です。

  • 中小メーカー:製品に込めた職人の意図を伝える手段に
  • 広告・デザイン会社:企画が生まれる瞬間を共有できる
  • IT企業:技術選定やリリース判断などの思考の背景を記録

また、社内向けに使えば、部門間の相互理解や理念の浸透にもつながります。

「プロセスを撮る」ことの副次的な効果

こうした舞台裏動画は、見せること以上に「撮ること」自体にも意味があります。撮影を意識することで、社内メンバーが「自分たちの考えが、外にどう伝わるか」を自然と意識するようになります。
つまり、動画は“記録”であると同時に“対話のきっかけ”でもあるのです。

プロセス動画は、完成品の背後にある「考え方」を可視化する手段として進化しています。特に、商品そのものよりも“なぜそうしたのか”という判断のプロセスを見せることで、企業に対する理解と信頼を育てることが可能です。会議・企画・試作といった一連の過程を記録し公開することは、単なる映像活用にとどまらず、企業文化を伝える新たなコミュニケーションになりつつあります。派手な演出より、リアルな“今”を淡々と伝える。そんな動画が、これからの共感をつくっていくのかもしれません。

“アンチ成功事例”動画が共感を生む理由

SNSには、完璧な日常や成功の瞬間があふれています。そんな中で今、「失敗の記録動画」とうのがあります。料理の失敗、DIYのやらかし、スポーツでのド派手なミス……こうした“うまくいかなかった”瞬間が美しく編集された動画が、じわじわと共感を集めています。

この現象の背景には、「他人の失敗を見ることで自分が安心できる」という、心理的な作用があります。比較表にするとこうなります:

コンテンツの種類 受け手の心理 視聴後の感情
成功体験動画 劣等感/憧れ 焦燥または刺激
失敗記録動画 共感/親近感 安堵または癒し

「美しく編集されたやらかし」がなぜバズる?

ただの失敗動画ではなく、“編集の美学”がバズの鍵を握っています。たとえば、映像のテンポ感・テロップの間・BGMのユーモアなど、視聴者に笑いと共感を届ける仕掛けがある動画が好まれます。

さらに、照明やカラコレで「失敗」すら映えるよう演出すれば、視覚的にも不快感がなくなり、“SNSで共有しやすい”コンテンツになります。ここで重要なのは「本人が笑っていること」。自虐的な笑いは、見る側にとっても安心材料です。

成功よりも“未完成”が愛される時代

企業のブランディングにも応用できる考え方があります。今や「完成されたパーフェクトな姿」よりも「試行錯誤している途中経過」にこそ共感が集まる時代です。ある職人が作業中に手を滑らせて作り直す動画や、新入社員が初めてプレゼンに挑む場面など、むしろ「うまくいかなかった記録」の方がリアルさを伝えることができます。

これは、B to CだけでなくB to Bの動画活用にも通じる考え方です。成功談ではなく「うまくいかなかったけど、こんな工夫で立て直した」という動画は、信頼を呼びます。

「アンチ成功事例アーカイブ」の構築とは

今、SNSや動画プラットフォームでは「#失敗動画」「#やらかし日記」などのハッシュタグが使われています。YouTube ShortsやInstagram Reelsでは、1分未満のテンポの良い“アンチ成功事例”が定期的に投稿され、継続的なファン層を形成しています。

このような動画をまとめた「やらかし動画アーカイブ」は、ある意味で“現代の癒し系コンテンツ”。ユーザーにとっては、笑えてホッとできる貴重な存在であり、制作者にとっても「編集技術」「構成力」「ユーモア」の腕試しができるジャンルです。

企業・個人での活用方法

個人クリエイターだけでなく、企業アカウントでもこのアプローチは有効です。たとえば、

  • 飲食店:厨房でのちょっとした失敗を明るく紹介
  • 工場:製品の試作段階でのミスや工夫を紹介
  • 教育系:講師の言い間違い集やNG集で場を和ませる

いずれも“完璧さ”ではなく“人間味”に焦点を当てることで、フォロワーとの距離が縮まります。

完璧を追い求めるコンテンツの時代は、ゆっくりと転換期を迎えています。料理の失敗やDIYのやらかしといった「アンチ成功事例動画」は、むしろ見る人の心を軽くし、共感や笑いを生み出しています。企業や個人の発信においても、こうした“人間らしさ”の記録が、ファンをつくるきっかけになるかもしれません。今後は「やらかし動画」こそが、新たな動画トレンドの主役となる可能性を秘めています。

経営理念が浸透しないのはなぜ?社員が語る動画が突破口に

経営理念は、社長や経営陣が強い想いを込めて作るものです。しかし、その想いが全社員に正しく届いているかというと、現場では「スローガンのように聞こえるだけ」「覚えているが意味までは分からない」といった声もあります。企業の大小に関わらず、理念の浸透は組織課題の一つ。ホワイトボードや冊子に掲げるだけでは“腹落ち”せず、社員が自分の経験に結びつけて理解する機会が求められています。

社員の“体験”こそが、理念を語る

理念を自分ごとにするには、誰かの「実体験」が必要です。そこで、“社員が語る理念体験”を映像で記録する手法です。例えば「挑戦」という理念を掲げている企業で、ある若手社員が「最初の営業失敗を乗り越えた話」を語る。そのリアルな声が、同じく悩む他の社員にとって、理念の意味を深く捉えるヒントになります。

図1:理念の理解度の段階(例)

段階 内容
①記憶 理念を覚えている
②理解 言葉の意味を説明できる
③共感 自分の経験と結びついている

「社員3名×1テーマ」の動画構成が効果的

理念を体験で伝えるには、1人だけでなく、複数人の視点を並列に見せることが効果的です。たとえば、同じ「顧客志向」という理念をテーマに、営業・開発・カスタマーサポートの3名がそれぞれの立場から語る構成。動画の中で「その理念がどう自分の行動につながったか」「迷った時、どう背中を押されたか」といった言葉を引き出すことで、理念の立体的な解釈が社内に伝わります。

なぜ動画なのか?言葉だけでは伝わらない“揺れ”

文字や音声だけでは伝わらない「表情」「間」「言いよどみ」こそ、社員の本音がにじみ出る瞬間です。理念について語るとき、正解を言おうとしてしまう傾向がありますが、動画では「迷ったこと」や「違和感があったこと」もそのまま見せられます。この“揺れ”があるからこそ、他の社員も「自分だけじゃなかった」と感じ、理念への理解が自然と深まっていくのです。

外向けよりも“社内向け”に刺さる動画

この種の動画は、社外に公開するPRよりも、むしろ社内での活用に真価があります。新入社員研修や部門ごとのミーティングで共有されることで、理念が抽象的な言葉から「身近な仕事感」に変わっていきます。特別な撮影環境を用意しなくても、普段使っている会議室で撮る5分間のインタビューが、全社の価値観共有を促す強力なツールになるのです。

経営理念を掲げること自体は珍しくありませんが、それを本当に「自分のこと」として理解し、行動に反映できている社員は少ないかもしれません。だからこそ、実体験を語る社員インタビュー動画は効果的です。理念を難しい言葉で伝えるのではなく、社員の実際の経験を通して“感じさせる”。その積み重ねが、社内に理念を浸透させる近道となります。