商品紹介動画といえば、自社製品を推すのが基本。しかし、「他社製品と並べて紹介」「競合にもメリットを認める」スタイルの動画が、じわじわと視聴数を伸ばしています。
このアプローチが好評な背景には、ユーザーの“情報に対する懐疑心”があります。一方的な宣伝ではなく、第三者視点のようなバランスある評価にこそ、信頼を寄せる傾向が強まっているのです。
競合を認めると、なぜ自社にプラス?
一見、リスクにも見える「競合の良い点を紹介する」手法。しかし、この姿勢が逆に視聴者に安心感を与えるのです。
「他社も認めた上で、自社はこういう立ち位置です」と明示することで、売り込み感を抑えつつ、自社の強みがよりクリアになります。
また、“どちらかを否定する”のではなく、“違いを整理して伝える”スタイルは、製品の導入段階で迷っているユーザーにとって非常に有益なコンテンツになります。
動画構成は「結論」から逆算する
比較型コンテンツで重要なのは、「なぜこの構成なのか」のロジックを裏側に持つこと。
たとえば以下のような動画構成が考えられます。
- 両社(複数社)の製品スペックを簡潔に紹介
- 利用シーンごとにメリット・デメリットを提示
- 購入の決め手となるポイントを整理
- 「こういう人には当社製品が向いています」と結論づける
このとき注意したいのは、競合を“利用する”のではなく“リスペクトする”姿勢です。批判は逆効果。視聴者はその空気も敏感に感じ取ります。
信頼を積み重ねる=未来の選択肢に入る
比較動画の目的は「今すぐ買ってもらう」ことではなく、「将来、選択肢に入れてもらう」ことにあります。
誠実で透明性のある情報発信は、ユーザーの中に“好印象”として記憶されます。そして、いざ購入タイミングが来たときに、その印象が背中を押すのです。
実際、家電・ITツール・BtoB製品など、検討期間が長い商材ほど、この“信頼の貯金”が効果を発揮します。
比較動画の落とし穴に注意
信頼性を重視する比較動画ですが、注意点もあります。
- 批判的すぎるトーンは避ける
- 公平性が感じられないと逆効果
- 「事実ベースの情報」に徹する(印象ではなく数値)
さらに、再生数を狙うあまり過激な言い回しや釣りタイトルに走ると、せっかくの“誠実さ”が台無しになります。視聴者はコンテンツの本気度を見抜いています。長く見られる動画を目指すなら、「視聴者の判断材料を増やす」というスタンスで作りましょう。
競合製品の良さも素直に伝える比較動画は、視聴者との信頼関係を築く大きな武器になります。売り込みを控えた丁寧な情報提供は、“選ばれなかったとしても嫌われない”というポジションを確立します。そして、その中立的な姿勢が、最終的に自社ブランドの印象を引き上げるのです。「何を売るか」ではなく、「どう伝えるか」。その工夫が、動画マーケティングの成果を左右しています。