匂い・温度・触感まで伝える?「感覚に訴える動画」

ユーザーが商品やサービスを「体験ベース」で選ぶ時代において、映像は単なる情報伝達手段ではなく、印象を左右する体験そのものです。特にサウナや飲食、医療、美容など“感覚価値”が求められる分野では、視覚だけに頼らず、温度や匂い、触感といった「五感への連想」をどう引き出すかが、動画制作におけるカギとなっています。

伝わりにくい「匂い・温度・触感」を動画で伝える工夫

匂いや触感は直接は伝えられませんが、「連想」させることは可能です。たとえば、湯気が立ち上る様子や肌にあたる蒸気の粒をスローモーションで見せることで、温かさや湿度が感じられます。また、手で氷を握る瞬間や、絹ごし豆腐をつかむときの“ふるふる感”を音と動きで見せれば、触感まで想起させることができます。

サウナ・飲食・医療業界における感覚動画の可能性

サウナ施設では、室内の空気感や“ととのう瞬間”を映像で伝える取り組みが始まっています。ロウリュの音や蒸気、外気浴中の風の揺れは、「その場にいるかのような感覚」を生み出します。
飲食業界では、料理を“食べる直前”までの一連の動作や、箸で割ったときの音など、視聴者が“味を想像する要素”に力を入れています。医療分野では、不安を和らげるために「手の温もり」「空間の柔らかさ」を伝えるような動画のニーズが高まっています。

「感覚拡張」のための映像技術と編集アプローチ

技術 伝えたい感覚 実装例
スローモーション 湿度・温度 湯気の動き、汗が流れる瞬間
マクロ撮影 触感 食材のきめ細かさ、皮膚の柔らかさ
高音質マイク録音 音触感 火のはぜる音、包丁が切れる音
色調調整 温冷感 温色(赤系)で温かさ、寒色(青系)で冷たさを演出

単に映像技術を使うだけでなく、「どの感覚を喚起したいのか」を明確にし、それに最適なカットや演出を選ぶことが重要です。

感覚を“予測させる”ことで伝わる、新しい動画体験

結局のところ、視聴者の中で感覚が“発生”するかどうかは、想像を刺激できるかにかかっています。たとえば、サウナで水風呂に入る前の「一瞬のためらい」を見せれば、冷たさが伝わることがあります。動画はあくまで「引き金」であり、見る人の記憶や経験と結びついた瞬間に、五感が動き出すのです。

匂いや温度、触感といった感覚情報を動画で伝えることは一見難しく思えますが、視覚・聴覚を巧みに組み合わせ、見る人の想像を誘う工夫次第で可能になります。特にサウナや飲食、医療といった業界では、感覚価値こそが差別化のカギ。テクニックだけでなく「何を感じてほしいか」という意図を明確に持つことが、感覚動画の成功のポイントです。

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