経営理念は、社長や経営陣が強い想いを込めて作るものです。しかし、その想いが全社員に正しく届いているかというと、現場では「スローガンのように聞こえるだけ」「覚えているが意味までは分からない」といった声もあります。企業の大小に関わらず、理念の浸透は組織課題の一つ。ホワイトボードや冊子に掲げるだけでは“腹落ち”せず、社員が自分の経験に結びつけて理解する機会が求められています。
社員の“体験”こそが、理念を語る
理念を自分ごとにするには、誰かの「実体験」が必要です。そこで、“社員が語る理念体験”を映像で記録する手法です。例えば「挑戦」という理念を掲げている企業で、ある若手社員が「最初の営業失敗を乗り越えた話」を語る。そのリアルな声が、同じく悩む他の社員にとって、理念の意味を深く捉えるヒントになります。
図1:理念の理解度の段階(例)
段階 | 内容 |
①記憶 | 理念を覚えている |
②理解 | 言葉の意味を説明できる |
③共感 | 自分の経験と結びついている |
「社員3名×1テーマ」の動画構成が効果的
理念を体験で伝えるには、1人だけでなく、複数人の視点を並列に見せることが効果的です。たとえば、同じ「顧客志向」という理念をテーマに、営業・開発・カスタマーサポートの3名がそれぞれの立場から語る構成。動画の中で「その理念がどう自分の行動につながったか」「迷った時、どう背中を押されたか」といった言葉を引き出すことで、理念の立体的な解釈が社内に伝わります。
なぜ動画なのか?言葉だけでは伝わらない“揺れ”
文字や音声だけでは伝わらない「表情」「間」「言いよどみ」こそ、社員の本音がにじみ出る瞬間です。理念について語るとき、正解を言おうとしてしまう傾向がありますが、動画では「迷ったこと」や「違和感があったこと」もそのまま見せられます。この“揺れ”があるからこそ、他の社員も「自分だけじゃなかった」と感じ、理念への理解が自然と深まっていくのです。
外向けよりも“社内向け”に刺さる動画
この種の動画は、社外に公開するPRよりも、むしろ社内での活用に真価があります。新入社員研修や部門ごとのミーティングで共有されることで、理念が抽象的な言葉から「身近な仕事感」に変わっていきます。特別な撮影環境を用意しなくても、普段使っている会議室で撮る5分間のインタビューが、全社の価値観共有を促す強力なツールになるのです。
経営理念を掲げること自体は珍しくありませんが、それを本当に「自分のこと」として理解し、行動に反映できている社員は少ないかもしれません。だからこそ、実体験を語る社員インタビュー動画は効果的です。理念を難しい言葉で伝えるのではなく、社員の実際の経験を通して“感じさせる”。その積み重ねが、社内に理念を浸透させる近道となります。