製品の製造工程や開発背景を紹介する“プロセス動画”が人気ですが、その範囲は「モノ」にとどまらなくなっています。例えば、企画段階や意思決定の現場をそのまま公開する“社内の舞台裏動画”です。
表に出ることのなかった「考え方」や「葛藤の過程」が、企業の姿勢や価値観として、ユーザーの心に届く新たな接点となっているのです。
なぜ「意思決定」を見せることが価値になるのか
企業活動の“裏側”は、消費者にとっては未知の世界です。たとえば、ある製品が発売されたとして、その背景にどんな議論があったのか、どんな案がボツになったのかを知ることで、単なる商品が“思想の結晶”として見えてきます。
下図のように、プロセス動画が与える印象は、単なる完成品よりも強く残る傾向があります。
完成品のみを見た視聴者 | 開発プロセスを見た視聴者 |
「いいモノだな」
「完璧に創られてる」 |
「人間味があって応援したくなる」
「苦労や意図が伝わってきた」 |
撮るべきは“整った現場”ではなく“考え中の現場”
意思決定の動画を撮る際に重要なのは、「演出しすぎないこと」です。会議中の迷いや、方向性が揺れる場面こそが視聴者にとってはリアルです。
とくに若い世代ほど「完成された説明」よりも、「まだ答えが出ていない模索のプロセス」に興味を持ちやすい傾向があります。これはSNSのライブ配信文化や、舞台裏ドキュメンタリーが支持される流れとも一致しています。
どんな企業が活用すべきか
プロセス動画は、特定の業界に限らず幅広く応用可能です。
- 中小メーカー:製品に込めた職人の意図を伝える手段に
- 広告・デザイン会社:企画が生まれる瞬間を共有できる
- IT企業:技術選定やリリース判断などの思考の背景を記録
また、社内向けに使えば、部門間の相互理解や理念の浸透にもつながります。
「プロセスを撮る」ことの副次的な効果
こうした舞台裏動画は、見せること以上に「撮ること」自体にも意味があります。撮影を意識することで、社内メンバーが「自分たちの考えが、外にどう伝わるか」を自然と意識するようになります。
つまり、動画は“記録”であると同時に“対話のきっかけ”でもあるのです。
プロセス動画は、完成品の背後にある「考え方」を可視化する手段として進化しています。特に、商品そのものよりも“なぜそうしたのか”という判断のプロセスを見せることで、企業に対する理解と信頼を育てることが可能です。会議・企画・試作といった一連の過程を記録し公開することは、単なる映像活用にとどまらず、企業文化を伝える新たなコミュニケーションになりつつあります。派手な演出より、リアルな“今”を淡々と伝える。そんな動画が、これからの共感をつくっていくのかもしれません。