プロモーション動画というと、製品のスペック、デザイン、機能性をクローズアップする手法が主流でした。しかし近年、そのスタイルに限界が見え始めています。
製品単体では差がつきにくくなった今、視聴者が知りたいのは「このモノが、どんな時間や空間に存在しているのか」。つまり“文脈”です。
そしてこの“文脈”を描くことで、無機質な製品が突然、生きた存在として感じられるようになります。
余白とはなにか?製品を囲む「関係性」に目を向ける
“余白”という言葉は、単に製品を見せないという意味ではありません。
製品に「触れる人」「置かれている空間」「時間の流れ」を主役にすることで、その製品が「生活や感情の一部」であることを自然に表現できます。
たとえば以下のような演出です。
要素 | 表現例 |
人 | 製品を使っている手元のみを映す/会話の中で登場する道具として使われる |
空間 | 製品が“置かれているだけ”の静かな部屋の映像 |
時間 | 朝~夜まで、製品の周囲で流れる時間を定点で記録する構成 |
このような映像では、製品が語らない分、視聴者の想像力が自然に働きます。
静かな動画が残す“温度”|見えないものが伝わる設計
製品をあえて“説明しない”動画は、一見するとインパクトに欠けるように思えるかもしれません。
しかしその静けさこそが、見る人に“温度感”や“雰囲気”を伝えます。
たとえば、誰もいない部屋の中でゆっくり回る加湿器。その映像に説明は一切ありませんが、「この製品はどんな時間を作るのか」が伝わります。
こうした動画が与えるのは、「機能性」ではなく「空気感」という、言葉では語れない体験です。
“見せない演出”がブランド価値を上げる理由
これは単なる映像美の話ではありません。“余白を描く動画”には、企業がモノづくりに対してどれだけ誠実であるかという姿勢も滲み出ます。
・説明しすぎない
・押しつけない
・見る人の想像を信じている
こうした姿勢は、視聴者に「この会社、信頼できるかも」と思わせるきっかけになります。
特に感性重視の若年層やクリエイティブ職層には、高く評価されやすい表現方法です。
“製品そのもの”から“製品がつくる世界”へ
動画の役割が「伝える」から「感じさせる」へと変化している今、製品を中心に据えず、むしろ背景に置くことが、かえって強い印象を生み出すのです。
以下の図をご覧ください。
【図:製品プロモーションの構造比較】
従来型 | 余白型 |
製品=主役
機能・特徴を説明 |
製品=場の一部
生活と感情を記録 |
この違いが、ユーザーの“感情への接続”を大きく左右します。
動画で製品を語るとき、主役にしすぎないことが逆に印象を深める。
“余白”を描くことで、製品が日常の一部として自然に馴染み、結果としてブランドの信頼感を底上げすることができます。今、企業が目指すべき動画は、語らないことで伝える表現なのかもしれません。