視聴者の心を動かす動画は「感動」や「驚き」が多いですが、最近では「地味な共感」も反応を生みます。たとえば、「靴下がいつも片方だけズレる」「電子レンジでチンすると、端が熱くて真ん中が冷たい」。そんな“どうでもいい不便”が、再生回数を伸ばしています。
こうした「生活のズレ」や「小さな不快感」は、SNS上で“わかる!”という共鳴を生みやすく、コメントやシェアを誘発します。
「再現性」が高いネタほど反応される
多くの共感系コンテンツには、「自分にもあった」「それ、昨日まさに!」という再現性があります。たとえば下記のような“小さな不便ネタ”が挙げられます。
不便ネタ例 | コメントされやすい理由 |
ペットボトルのラベルがうまく剥がれない | 誰でも経験がある |
靴下のかかとがずれる | 解決策も含め議論になりやすい |
洗面台の水はね | 地域・世代問わず共通 |
これらは「誰もが気づいていたけれど言語化されていない」モヤモヤであり、動画で視覚化することで一気に広まる力を持っています。
“まとめ動画”よりも短く深堀り
YouTubeやTikTokでは、複数の“あるある”を詰め込んだ動画よりも、ひとつの不便ネタを短く深掘りするパターンのほうが再生数が伸びやすい傾向があります。
たとえば、
- 「ポテチの袋をキレイに開けられない」を15秒で再現
- 「傘の骨が1本だけ変な方向に曲がる瞬間」をスローモーションで撮影
こうした「一点突破型」の映像は、タイムライン上での視認性も高く、無音でも成立するという点も強みです。
コメント欄を“二次コンテンツ”にする
このジャンルの動画は、「本編」以上に「コメント欄」が盛り上がる傾向にあります。「私の家ではこうです」「これに共感した人、他にもいる?」という視聴者同士の交流が始まります。
その結果、コメント欄が「追加の不便ネタ」の宝庫になり、次の動画企画のヒントにもつながります。制作者と視聴者の“共創”が生まれる瞬間です。
地味さを磨く
「不便動画」は演出を足しすぎると嘘っぽくなってしまいます。あくまで“日常っぽさ”を保つために、以下のような撮影ポイントが有効です。
- 手ブレやズームなし、固定カメラで撮る
- ナレーションやBGMは使わない
- 静かな生活音をそのまま収録する
- 本人の困り顔やため息をリアルに残す
むしろ、加工しないことで“これはガチだ”と感じてもらえ、再生されやすくなります。
“ちょっと不便”な瞬間を切り取る動画は、情報でも娯楽でもなく、“生活の実感”を映すコンテンツです。押しつけがましくなく、ただ「あるある」を見せるだけ。にもかかわらず、多くの人が反応し、広まり続けています。動画制作において、「共感とは演出するものではなく、見つけ出すもの」という視点が、新たな拡散の鍵になるのかもしれません。