地方のスーパーが投稿する“お惣菜紹介動画”が、TikTokやInstagramでじわじわと再生回数を伸ばしています。店舗スタッフが手作り弁当や揚げ物を紹介するだけのシンプルな内容にもかかわらず、再生数は多くあります。これは、「生活のリアル」にフォーカスした動画が、都市部の視聴者にも刺さっていることを意味しています。
エンタメ要素になり得る“素朴さ”の正体
特徴は、演出されすぎていない“素朴さ”です。スタッフの方言混じりの説明や、ラップ音が混ざる調理風景、時には段ボールの横で並べられるコロッケなど、どこか親しみやすく「現場感」がある。これは逆に、過度に作られたPR動画との差別化となり、視聴者の好奇心を刺激します。
なぜ見てしまう?「日常」をコンテンツ化する力
お惣菜紹介動画は、料理動画や食レポとは違い、どちらかというと“日常観察”に近いジャンルです。以下のような視点が、視聴者を惹きつける要因になっています。
視点 | 内容例 |
感情移入型 | 地方の暮らしや食文化に思いを馳せる |
実用情報型 | 今日のごはんの参考にしたい |
癒やし・暇つぶし型 | なんとなく見続けてしまう雰囲気やトーンがある |
つまり、「何かを得る」よりも「何となく心地よい」動画が支持されているのです。
機材よりも“誰が語るか”が重要
動画制作というと、機材や編集技術が注目されがちですが、このジャンルでは“出演者の存在感”こそが大切です。ベテラン主婦のトークや、ぶっきらぼうな調理担当の語りが、地元密着感を強めています。背景に少し雑多なバックヤードが映っていても、むしろ「リアル」として機能します。きれいな映像美より、「味のある人物」が主役になれる構成が求められます。
企業目線でこの動きを取り入れるなら、「情報」ではなく「空気」を伝える動画づくりが鍵となります。たとえば以下のようなアプローチが有効です。
- 編集よりも撮りっぱなし感を活かす
- 店員さんの“地声”をそのまま使う
- 日常のワンシーンを切り取る構成にする
広告的な意図を前面に出さないことで、逆に「この店いいかも」と感じてもらう効果があります。
過度な演出をしない“生活感”こそが、視聴者の心に残る動画になるということです。動画制作の現場では、機材や構成に目が行きがちですが、「誰が、どこで、どう話すか」という視点を持つことが、動画の魅力を引き出す近道になるでしょう。地方スーパーの動画に、ヒントが詰まっています。