情報社会の静寂|“ぼーっとできる”映像

現代人は1日に膨大な数の情報接触をしているといわれます。
そのなかで、脳は常に判断・比較・選択を強いられています。
一方で、「ぼーっとする時間がほしい」と感じる人が増えているのも事実。
これは「癒やし」ではなく、“思考の休止”を求めているサインです。
動画を使ってこの「思考の休止」をつくることが可能です。

“癒やし映像”との決定的な違い

癒やし映像が「疲れを癒す目的」で構成されているのに対し、
“ぼーっとできる映像”は、目的すらないのが特徴です。

比較項目 癒やし映像 ぼーっと映像
目的 リラックス、安らぎ 無目的、思考停止
穏やかなBGMや環境音 音がない/一定の環境ノイズ
構成 物語・メッセージ性あり 連続性なし・流れに委ねる
感情 癒やされる 何も感じない(=解放)

この「何も起きない時間」が、むしろ脳に休止を与えます。

無思考映像

映像を“ぼーっとできる”ものにするには、編集が重要です。
・構図は動かさない
・BGMは使わず、風や遠くの車の音など環境音をそのままに
・1カットを10秒以上キープする

例えば、風に揺れるカーテン、通りすぎる雲、電車のホームで人がいなくなる瞬間。
これらは“情報がない映像”ですが、見る人の思考をそっと休ませます。

“都市の空白”を撮る

自然映像だけでなく、都市にも“無心の瞬間”は潜んでいます。
夜明け前のコンビニの灯り、閉店後の商店街、信号が切り替わる数秒。
そこには「人の気配があるのに動きが止まる」不思議な静けさがあります。
動画制作者は、こうした“都市の空白”を見つけ出す目を持つことが重要です。
「美しさ」よりも「無音と無目的」をどう切り取るかが鍵になります。

“ぼーっとできる映像”とは、感動や癒やしを与えるものではなく、
ただ「何も起きない」ことに意味を見出す動画です。
映像制作において最も難しいのは、何かを“足す”ことではなく、
“何も起こらない空間”を作ること。
それは、現代人の思考が常に動き続ける社会において、
いちばん贅沢な時間の提供といえるかもしれません。

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