2025年 6月 の投稿一覧

主役は“物”?人を映さずに心を映す日常動画の魅力とは

YouTubeやInstagramで、“人を映さない日常動画”があります。これは登場人物の顔を映さず、むしろ食器や靴、バッグ、机など、物たちの存在感にフォーカスするスタイル。なぜこのような表現が今支持を集めているのでしょうか。

ひとつの背景にあるのは、「過剰な演出」への反動なのかと。キラキラした日常や意識の高いライフスタイルへの疲れから、より淡々としたリアルに人々が惹かれる傾向があります。主観や感情を排し、「そこにあるだけ」の存在を淡々と切り取る姿勢が、逆に視聴者の想像力を刺激しているのです。

“物の目線”が描く生活の奥行き

これらの動画では、「物」が静かに語りかけてきます。たとえば、毎朝使うマグカップの温度の変化、通勤前にそっと置かれる革靴の存在感、日々ページがめくられていく手帳の質感。こうした細部は、見落とされがちですが、実はその人の習慣や価値観を雄弁に物語っているのです。

人が語らないからこそ、モノの語るストーリーが深く心に残る。物に宿る記憶や時間の蓄積に、私たちは無意識に共感し、心を寄せているのかもしれません。

顔出し不要、誰でも始められる制作スタイル

“物視点動画”のもうひとつの魅力は、制作のハードルが低いこと。顔を出す必要がないため、表現に対する心理的ハードルが下がり、個人でも気軽に発信できるジャンルとして人気が高まっています。

また、カメラを手に取りやすい位置に置き、視線を下げて撮影するだけでも新鮮な映像が撮れるのが特徴。編集もシンプルで、BGMを最小限に抑えることで、物音や生活音が自然とリアルさを演出します。

企業活用の可能性も広がる

この“物主役動画”は、たとえば製造業の作業台の上に置かれた工具の動き、ホテルの客室に置かれたグラスやインテリアの風景など、「無言のブランディング」として企業が取り入れるケースも見られます。

特に海外視聴者にとっては、日本的なミニマルな映像美や静けさに価値を見出す傾向もあり、商品やサービスの間接的な魅力発信として活用できる可能性があります。

 “見せない”からこそ伝わる感情

視聴者の想像を引き出すのは、常に“余白”です。人を映さず、言葉も多用しないスタイルは、見る側に「感じさせる力」を委ねる表現です。

たとえば以下のような映像パターンは、非常にシンプルながら印象に残ります。

シーン構成 映像内容例 表現効果
朝の食卓 湯気の立つ味噌汁と並んだ茶碗 日常の温度、静かな始まり
通勤準備 並べられた靴と整った鞄 規律や出発前の緊張感
書斎の机 万年筆とコーヒーカップの静止画 思索や余白の時間

こうした映像の中に、“語らないからこそ伝わる感情”が宿っているのです。

「人を映さず、物を通して日常を描く」という動画表現は、今の時代に求められる“静かなリアル”を映し出します。派手さよりも、生活の輪郭や習慣のにじみ出る物たちの存在感にこそ、視聴者は癒しと共感を感じているのです。

制作ハードルが低く、個人から企業まで応用可能なこのアプローチ。あなたも身の回りの「物」にそっとカメラを向けてみてはいかがでしょうか。そこには、語られない物語がきっと存在しているはずです。

【誰に見せても伝わる】会社紹介動画の二刀流戦略

かつては「採用動画」と「営業動画」は用途がまったく別ものでした。
しかし今、企業紹介の手間とコストを抑えながら、多用途に使える動画が求められています。

▼理由は以下のとおりです。

  • SNSやWeb掲載など、発信の場が増えた
  • 採用者も顧客も「会社の素顔」に関心を持っている
  • 撮影コストや制作時間を合理化したい企業が増えている

つまり、「1本で2役を担える動画」が強く支持されるようになったのです。

「どちらにも通じる構成」とは?

二刀流の動画は、単なる会社紹介では成立しません。
採用希望者も、営業先も「目的」が違うため、どちらの視点もバランスよく取り入れる構成が必要です。

下記のような要素を組み合わせましょう。

項目 採用向け視点 営業向け視点
冒頭の語り口 なぜこの会社が存在するのか どんな社会課題を解決しているか
日常シーン 社員の働き方、オフィス環境 組織力・対応力が伝わる現場風景
実績・クライアント紹介 安心して働ける企業である証拠 実績に裏打ちされた信頼性の可視化
締めくくりの一言 「この会社で働きたい」に繋げる 「一度話を聞いてみよう」と思わせる

あえて“説明しすぎない”工夫

採用・営業いずれにとっても、情報の「余白」は重要です。
動画ですべてを語りきるのではなく、興味を喚起する内容であることが、視聴後のアクションを生み出します。

たとえば、

  • 説明ナレーションは最小限にして社員の自然な声を拾う
  • 一つの部署に絞って丁寧に描写する(例:製造現場だけ)
  • 専門用語を避け、生活者視点で語る

など、「語りすぎない」ことでリアリティを引き立たせます。

利用シーンは“入口”に注目する

動画はどこで誰に見られるかによって、印象が変わります。
共通動画でも、導線を工夫するだけで効果は大きく変わります。

  • 採用:求人ページや説明会、エントリー直前のリマインドメールに添付
  • 営業:初回商談前、問い合わせ返信時、提案資料の補足リンクとして添付

このように、「接点の最初」に動画を見せると、言葉では伝えにくい安心感や空気感が先に届きます。

二刀流動画の落とし穴と対策

最後に、よくある失敗例と対策を押さえておきましょう。

  •  会社紹介に終始し、誰に向けているかが曖昧
  •  “万能動画”を目指しすぎて焦点がぼやける
  •  社員の演出が硬すぎて親しみが湧かない

 

対策

  • 冒頭で「この動画は〇〇の方に向けて」と明示する
  • 動画の長さは2分以内が基本。要素は絞る
  • ナレーションより社員の素の声を重視する

1本で「誰にでも伝わる」時代へ

採用と営業の両方に活かせる“二刀流動画”は、企業のブランディング資産として、ますます価値を高めます。
すべてを伝えようとせず、見る人に「次の行動」を促す設計。その一本が、「企業の顔」として長く活躍してくれるはずです。

会社紹介動画は4分類で考える|目的別の使い分けとは?

企業の情報発信が動画にシフトしておりますが、「何を伝えるか」「どう見せるか」はいまだ模索中の企業も多いでしょう。とくに「会社紹介動画」と一括りにされがちなジャンルでも、目的や視聴者のフェーズによって最適な構成は異なります。この記事では、会社紹介動画を4タイプに分類し、それぞれの特徴と導入メリットを整理します。

タイプ①:全体像を掴ませる「自社紹介」動画

概要を短時間で伝えるこの形式は、新卒採用や展示会、営業先の初回訪問など、接点の入口で重宝されます。構成は、社歴・事業概要・強み・拠点などを2〜3分でまとめるのが一般的。

特徴 詳細
主な目的 初見ユーザーに“全体像”を伝える
構成要素 企業理念/事業領域/沿革など
活用シーン 採用、展示会、営業資料など

過剰な演出よりも「わかりやすさ」と「視認性」が求められます。アニメーションやナレーションで情報整理するのも有効です。

タイプ②:具体的な理解を促す「事業紹介」動画

単なる「何をしている会社か」ではなく、「どう取り組んでいるのか」まで踏み込むのがこの動画。特定のサービスや製品にフォーカスし、事例やプロセス、社会的意義まで見せることで、購買・取引の意欲を引き出します。

例えば、製造業なら工程の可視化、IT業ならUI画面とともに導入メリットを解説する…といった具体化がカギです。

タイプ③:距離を縮める「インタビュー」型動画

代表・社員・顧客のリアルな声を届ける形式は、温度感のある発信に適しています。特に、採用やBtoB商談の中盤以降で「信頼できる会社かどうか」を判断する材料として機能します。

社員の雰囲気、現場の空気、リーダーの言葉遣いなど、文章では伝えきれない“人格的要素”を伝える場として効果的です。

タイプ④:共感を生む「ドキュメント」風動画

もっとも感情に訴える形式がこのタイプ。実際の仕事風景、研修の様子、イベントの裏側などを追いかけることで、「この会社で働く・関わるとはこういうことか」という生活実感を伝えることができます。

編集は控えめに、余白や間を活かした構成が特長。視聴者が“観察者”として入り込めるため、採用でも営業でもエモーショナルな関係性を構築できます。

会社紹介動画は、「誰に・何を伝えたいか」によって構成を柔軟に変えるべきです。全体紹介、事業深掘り、人物インタビュー、ドキュメント風、これらは使い分けではなく、組み合わせて活かす“編集術”とも言えます。動画を一本で済ませようとせず、視聴者の行動段階に合わせて最適な形で届ける。この設計こそが、動画戦略の本質といえるでしょう。

“製品の余白”を描く動画が心に残る理由

プロモーション動画というと、製品のスペック、デザイン、機能性をクローズアップする手法が主流でした。しかし近年、そのスタイルに限界が見え始めています。
製品単体では差がつきにくくなった今、視聴者が知りたいのは「このモノが、どんな時間や空間に存在しているのか」。つまり“文脈”です。

そしてこの“文脈”を描くことで、無機質な製品が突然、生きた存在として感じられるようになります。

余白とはなにか?製品を囲む「関係性」に目を向ける

“余白”という言葉は、単に製品を見せないという意味ではありません。
製品に「触れる人」「置かれている空間」「時間の流れ」を主役にすることで、その製品が「生活や感情の一部」であることを自然に表現できます。

たとえば以下のような演出です。

要素 表現例
製品を使っている手元のみを映す/会話の中で登場する道具として使われる
空間 製品が“置かれているだけ”の静かな部屋の映像
時間 朝~夜まで、製品の周囲で流れる時間を定点で記録する構成

このような映像では、製品が語らない分、視聴者の想像力が自然に働きます。

静かな動画が残す“温度”|見えないものが伝わる設計

製品をあえて“説明しない”動画は、一見するとインパクトに欠けるように思えるかもしれません。
しかしその静けさこそが、見る人に“温度感”や“雰囲気”を伝えます。

たとえば、誰もいない部屋の中でゆっくり回る加湿器。その映像に説明は一切ありませんが、「この製品はどんな時間を作るのか」が伝わります。

こうした動画が与えるのは、「機能性」ではなく「空気感」という、言葉では語れない体験です。

 “見せない演出”がブランド価値を上げる理由

これは単なる映像美の話ではありません。“余白を描く動画”には、企業がモノづくりに対してどれだけ誠実であるかという姿勢も滲み出ます。

・説明しすぎない
・押しつけない
・見る人の想像を信じている

こうした姿勢は、視聴者に「この会社、信頼できるかも」と思わせるきっかけになります。
特に感性重視の若年層やクリエイティブ職層には、高く評価されやすい表現方法です。

 “製品そのもの”から“製品がつくる世界”へ

動画の役割が「伝える」から「感じさせる」へと変化している今、製品を中心に据えず、むしろ背景に置くことが、かえって強い印象を生み出すのです。

以下の図をご覧ください。

【図:製品プロモーションの構造比較】

従来型 余白型
製品=主役

機能・特徴を説明

製品=場の一部

生活と感情を記録

この違いが、ユーザーの“感情への接続”を大きく左右します。

動画で製品を語るとき、主役にしすぎないことが逆に印象を深める。
“余白”を描くことで、製品が日常の一部として自然に馴染み、結果としてブランドの信頼感を底上げすることができます。今、企業が目指すべき動画は、語らないことで伝える表現なのかもしれません。

プロセス動画が企業の信頼をつくる理由

製品の製造工程や開発背景を紹介する“プロセス動画”が人気ですが、その範囲は「モノ」にとどまらなくなっています。例えば、企画段階や意思決定の現場をそのまま公開する“社内の舞台裏動画”です。

表に出ることのなかった「考え方」や「葛藤の過程」が、企業の姿勢や価値観として、ユーザーの心に届く新たな接点となっているのです。

なぜ「意思決定」を見せることが価値になるのか

企業活動の“裏側”は、消費者にとっては未知の世界です。たとえば、ある製品が発売されたとして、その背景にどんな議論があったのか、どんな案がボツになったのかを知ることで、単なる商品が“思想の結晶”として見えてきます。

下図のように、プロセス動画が与える印象は、単なる完成品よりも強く残る傾向があります。

 

完成品のみを見た視聴者 開発プロセスを見た視聴者
「いいモノだな」

「完璧に創られてる」

「人間味があって応援したくなる」

「苦労や意図が伝わってきた」

撮るべきは“整った現場”ではなく“考え中の現場”

意思決定の動画を撮る際に重要なのは、「演出しすぎないこと」です。会議中の迷いや、方向性が揺れる場面こそが視聴者にとってはリアルです。

とくに若い世代ほど「完成された説明」よりも、「まだ答えが出ていない模索のプロセス」に興味を持ちやすい傾向があります。これはSNSのライブ配信文化や、舞台裏ドキュメンタリーが支持される流れとも一致しています。

どんな企業が活用すべきか

プロセス動画は、特定の業界に限らず幅広く応用可能です。

  • 中小メーカー:製品に込めた職人の意図を伝える手段に
  • 広告・デザイン会社:企画が生まれる瞬間を共有できる
  • IT企業:技術選定やリリース判断などの思考の背景を記録

また、社内向けに使えば、部門間の相互理解や理念の浸透にもつながります。

「プロセスを撮る」ことの副次的な効果

こうした舞台裏動画は、見せること以上に「撮ること」自体にも意味があります。撮影を意識することで、社内メンバーが「自分たちの考えが、外にどう伝わるか」を自然と意識するようになります。
つまり、動画は“記録”であると同時に“対話のきっかけ”でもあるのです。

プロセス動画は、完成品の背後にある「考え方」を可視化する手段として進化しています。特に、商品そのものよりも“なぜそうしたのか”という判断のプロセスを見せることで、企業に対する理解と信頼を育てることが可能です。会議・企画・試作といった一連の過程を記録し公開することは、単なる映像活用にとどまらず、企業文化を伝える新たなコミュニケーションになりつつあります。派手な演出より、リアルな“今”を淡々と伝える。そんな動画が、これからの共感をつくっていくのかもしれません。

“アンチ成功事例”動画が共感を生む理由

SNSには、完璧な日常や成功の瞬間があふれています。そんな中で今、「失敗の記録動画」とうのがあります。料理の失敗、DIYのやらかし、スポーツでのド派手なミス……こうした“うまくいかなかった”瞬間が美しく編集された動画が、じわじわと共感を集めています。

この現象の背景には、「他人の失敗を見ることで自分が安心できる」という、心理的な作用があります。比較表にするとこうなります:

コンテンツの種類 受け手の心理 視聴後の感情
成功体験動画 劣等感/憧れ 焦燥または刺激
失敗記録動画 共感/親近感 安堵または癒し

「美しく編集されたやらかし」がなぜバズる?

ただの失敗動画ではなく、“編集の美学”がバズの鍵を握っています。たとえば、映像のテンポ感・テロップの間・BGMのユーモアなど、視聴者に笑いと共感を届ける仕掛けがある動画が好まれます。

さらに、照明やカラコレで「失敗」すら映えるよう演出すれば、視覚的にも不快感がなくなり、“SNSで共有しやすい”コンテンツになります。ここで重要なのは「本人が笑っていること」。自虐的な笑いは、見る側にとっても安心材料です。

成功よりも“未完成”が愛される時代

企業のブランディングにも応用できる考え方があります。今や「完成されたパーフェクトな姿」よりも「試行錯誤している途中経過」にこそ共感が集まる時代です。ある職人が作業中に手を滑らせて作り直す動画や、新入社員が初めてプレゼンに挑む場面など、むしろ「うまくいかなかった記録」の方がリアルさを伝えることができます。

これは、B to CだけでなくB to Bの動画活用にも通じる考え方です。成功談ではなく「うまくいかなかったけど、こんな工夫で立て直した」という動画は、信頼を呼びます。

「アンチ成功事例アーカイブ」の構築とは

今、SNSや動画プラットフォームでは「#失敗動画」「#やらかし日記」などのハッシュタグが使われています。YouTube ShortsやInstagram Reelsでは、1分未満のテンポの良い“アンチ成功事例”が定期的に投稿され、継続的なファン層を形成しています。

このような動画をまとめた「やらかし動画アーカイブ」は、ある意味で“現代の癒し系コンテンツ”。ユーザーにとっては、笑えてホッとできる貴重な存在であり、制作者にとっても「編集技術」「構成力」「ユーモア」の腕試しができるジャンルです。

企業・個人での活用方法

個人クリエイターだけでなく、企業アカウントでもこのアプローチは有効です。たとえば、

  • 飲食店:厨房でのちょっとした失敗を明るく紹介
  • 工場:製品の試作段階でのミスや工夫を紹介
  • 教育系:講師の言い間違い集やNG集で場を和ませる

いずれも“完璧さ”ではなく“人間味”に焦点を当てることで、フォロワーとの距離が縮まります。

完璧を追い求めるコンテンツの時代は、ゆっくりと転換期を迎えています。料理の失敗やDIYのやらかしといった「アンチ成功事例動画」は、むしろ見る人の心を軽くし、共感や笑いを生み出しています。企業や個人の発信においても、こうした“人間らしさ”の記録が、ファンをつくるきっかけになるかもしれません。今後は「やらかし動画」こそが、新たな動画トレンドの主役となる可能性を秘めています。

経営理念が浸透しないのはなぜ?社員が語る動画が突破口に

経営理念は、社長や経営陣が強い想いを込めて作るものです。しかし、その想いが全社員に正しく届いているかというと、現場では「スローガンのように聞こえるだけ」「覚えているが意味までは分からない」といった声もあります。企業の大小に関わらず、理念の浸透は組織課題の一つ。ホワイトボードや冊子に掲げるだけでは“腹落ち”せず、社員が自分の経験に結びつけて理解する機会が求められています。

社員の“体験”こそが、理念を語る

理念を自分ごとにするには、誰かの「実体験」が必要です。そこで、“社員が語る理念体験”を映像で記録する手法です。例えば「挑戦」という理念を掲げている企業で、ある若手社員が「最初の営業失敗を乗り越えた話」を語る。そのリアルな声が、同じく悩む他の社員にとって、理念の意味を深く捉えるヒントになります。

図1:理念の理解度の段階(例)

段階 内容
①記憶 理念を覚えている
②理解 言葉の意味を説明できる
③共感 自分の経験と結びついている

「社員3名×1テーマ」の動画構成が効果的

理念を体験で伝えるには、1人だけでなく、複数人の視点を並列に見せることが効果的です。たとえば、同じ「顧客志向」という理念をテーマに、営業・開発・カスタマーサポートの3名がそれぞれの立場から語る構成。動画の中で「その理念がどう自分の行動につながったか」「迷った時、どう背中を押されたか」といった言葉を引き出すことで、理念の立体的な解釈が社内に伝わります。

なぜ動画なのか?言葉だけでは伝わらない“揺れ”

文字や音声だけでは伝わらない「表情」「間」「言いよどみ」こそ、社員の本音がにじみ出る瞬間です。理念について語るとき、正解を言おうとしてしまう傾向がありますが、動画では「迷ったこと」や「違和感があったこと」もそのまま見せられます。この“揺れ”があるからこそ、他の社員も「自分だけじゃなかった」と感じ、理念への理解が自然と深まっていくのです。

外向けよりも“社内向け”に刺さる動画

この種の動画は、社外に公開するPRよりも、むしろ社内での活用に真価があります。新入社員研修や部門ごとのミーティングで共有されることで、理念が抽象的な言葉から「身近な仕事感」に変わっていきます。特別な撮影環境を用意しなくても、普段使っている会議室で撮る5分間のインタビューが、全社の価値観共有を促す強力なツールになるのです。

経営理念を掲げること自体は珍しくありませんが、それを本当に「自分のこと」として理解し、行動に反映できている社員は少ないかもしれません。だからこそ、実体験を語る社員インタビュー動画は効果的です。理念を難しい言葉で伝えるのではなく、社員の実際の経験を通して“感じさせる”。その積み重ねが、社内に理念を浸透させる近道となります。

サイト離脱を防ぐ!動画の配置場所で反応率が変わる理由

Webサイトに動画を埋め込む際、多くの企業が「とりあえず目立つ位置に置こう」とファーストビューに設置します。しかし、ファーストビュー=最適解とは限りません。訪問者の視線は常に意図どおりに動くとは限らず、「動画があることで逆にスクロールを止める」「読み込みに時間がかかって離脱される」など、マイナス面も存在します。
動画の配置は“目立たせたい”よりも“何を伝えたいか”に基づいて考える必要があります。

ファーストビューに置くメリットとデメリット

ファーストビューに動画を設置する最大のメリットは、第一印象の強化です。ブランドメッセージを一瞬で伝えられることから、ビジュアル訴求が必要な商材に有効です。
一方で、デメリットもあります。とくに以下の点には注意が必要です。

項目 内容
表示速度 動画の読み込みでページの初速が遅れる
自動再生 音声ありの自動再生はスマホで敬遠されやすい
コンバージョン妨害 CTAボタンが押されにくくなるレイアウトも

ユーザー体験を阻害してしまうなら、本末転倒です。

動画の内容と配置の相性を考える

動画の目的によって、置くべき場所は変わります。たとえば、「ブランド紹介」や「採用メッセージ」のように感情を引き出す動画は上部でも効果を発揮しやすいです。
一方で「製品説明」や「使い方ガイド」などの実用的コンテンツは、導線の中盤以降に配置した方が、コンテキストと合致しやすく、視聴されやすくなります。
「全員に見せたい」動画と「興味がある人だけ見てほしい」動画を分けて考えることが、配置戦略の第一歩です。

スマホとPCで見るユーザーの“動き”は違う

モバイル環境では、ファーストビューに動画があるとスクロールに時間がかかるうえ、通信量の懸念も増します。
実際、モバイルユーザーの滞在時間が短いサイトでは、動画があることで直帰率が高まる傾向も。逆にPCではワイド画面を活かした全画面動画での演出が好まれる場合があります。
スマホとPCで出し分ける、あるいはスマホ時は動画の静止画キャプチャを表示し、クリック後に再生させる方法も有効です。

理想的な動画配置を考えるチェックリスト

最後に、動画をWebサイトに埋め込む前に確認したいポイントをチェックリストにまとめました。

  • その動画は、すぐ見せるべきものか?
  • 動画の読み込み速度は軽快か?
  • 音声再生はユーザーに委ねられているか?
  • 動画の下に目的の導線(ボタンやフォーム)があるか?
  • スマホとPCでの表示確認を済ませたか?

このチェックを通過すれば、動画はユーザーの“興味の流れ”に自然に組み込まれるはずです。

動画はWebサイトにおいて強力なコンテンツですが、配置を誤ると逆効果にもなりえます。とくにファーストビューへの設置はメリットとデメリットが共存するため、慎重な判断が求められます。
伝えたい内容、ユーザーの導線、使用デバイスなどを総合的に踏まえて、最適な配置を検討しましょう。“見せたい場所”ではなく、“見られやすい場所”に置くという視点が、動画活用成功の鍵となります。

士業・コンサル業の“顔が見える”動画戦略

従来、士業やコンサルタントの集客では「実績」や「資格」が前面に出されてきました。しかし、依頼者はそれ以上に「どんな人か」「話しやすいか」といった“温度感”を求める傾向にあります。専門性は大前提として、「安心して話せる存在かどうか」が選定の大きな基準に変わってきたのです。テキストや静止画だけでは伝わりづらいこうした感覚的な要素こそ、動画が得意とする分野です。

「紹介経由」だけに頼らない信頼構築

士業・コンサル業では、信頼がすべてといっても過言ではありません。だからこそ多くが「紹介経由」での集客に頼りがちですが、紹介以外の経路でも信頼を獲得する方法として、動画は大きな武器になります。

特に、自社サイトやYouTube、LinkedInなどで短尺動画を活用すれば、1対1で話す機会がない人にも「誠実さ」や「知識量」「姿勢」を印象づけることができます。

動画に向く“士業ならでは”の発信内容とは?

動画といっても、派手な演出は不要です。以下のようなテーマが自然で信頼性も高く、視聴者の不安を和らげます。

  • よくある相談事例(※実例ではなく類型で構成)
  • 相談の流れや、費用の目安
  • 対応可能なエリア・相談手段(訪問・オンラインなど)
  • 「なぜこの職業を選んだか」など、人柄に関わる話題

士業やコンサルの仕事は、「見えづらさ」が最大のネック。そこを、やわらかく可視化することが動画の目的です。

信頼感を生む構成

動画の構成はシンプルがベスト。「自己紹介」「相談できるテーマ」「一言メッセージ」などをテンポよく組み合わせ、1分〜1分半程度にまとめるのが理想です。

図:士業動画の基本構成

パート 内容の例
冒頭5秒 名前・肩書き+あいさつ
本編(40秒) 専門分野・対応業務の説明
終わり(15秒) 視聴者への一言+問い合わせ誘導

撮影時は、「背景に本棚や事務所風景を入れる」「ライトは明るめ」「話し方はゆっくり・丁寧」など、小さな工夫が信頼の積み重ねになります。

士業・コンサル業における動画の注意点

一方で、動画活用には注意点もあります。たとえば「過度に演出する」「専門用語が多すぎる」「一方的に話しすぎる」といった内容では、逆に信頼を損なうリスクがあります。あくまで“寄り添う姿勢”を忘れず、視聴者が安心できる語り口と内容に徹することが重要です。

士業・コンサル業は、「顔が見えない職業」だからこそ、動画によって“伝えられる安心感”が武器になります。
紹介だけに頼らず、動画という手段で人柄や姿勢を可視化することで、初対面の壁を自然に取り払い、信頼を育てることができます。
派手さより誠実さ。士業の動画は、そうした“等身大の発信”こそが鍵なのです。

全国営業のリアルが伝わる“出張めし”動画とは?

会社紹介やサービス紹介の動画では、どうしても“企業の顔”として整えられた印象が前に出ます。しかし最近、視聴者が注目するのはその裏側で、出張先でのご当地グルメを語る動画。
営業社員が訪れた土地で「これは本当にうまかった」と語るだけの映像でも、見ている人にとっては「この人たち、ちゃんと現場に足を運んでいるんだな」という実感につながります。

 “ごはん”を通じて見えてくる人の輪郭

たとえば、東京から福岡に出張した営業担当が、空き時間に立ち寄ったラーメン屋を紹介する動画。何を食べたか、なぜそこに入ったか、どう感じたか。
この何気ないやりとりの中に、その人の好みや人柄が浮かび上がります。
さらにそれが、「社内のあの人、こんなところに行ったんだ」という社内コミュニケーションのきっかけにもなることがあります。

“出張×地図”で伝わる活動の広がり

動画を単発で投稿するのではなく、「出張めしマップ」として地図上に可視化するのもいいでしょう。
以下のように可視化することで、単なる食レポが営業活動の証拠になります。

[図:出張めしマップのイメージ]

  • 東京:立ち食いそば(Aさん)
  • 大阪:お好み焼き(Bさん)
  • 名古屋:味噌煮込みうどん(Cさん)
  • 福岡:屋台ラーメン(Aさん)
    ※ 各地点に社員の動画リンクを設置

これは、「どの地域に訪れているか」がひと目でわかるだけでなく、地域密着のスタンスを示す材料にもなります。

演出より“素”の動画が響く理由

ナレーションや編集を加えすぎず、スマホ1台で撮ったような素朴な動画の方が、実は見られやすい傾向があります。
「しっかり作り込んだ動画」よりも、「ちょっとした旅の記録」のような映像の方が、視聴者との距離感を近づける効果があるからです。
カメラのブレも多少はOK。むしろ、完璧でないことが信頼感につながることもあります。

社外向けだけでなく、社内にも効く

この取り組みは、外部に向けたブランディングだけでなく、社員同士の理解を深める社内施策にもなり得ます。
「この人がこの地域に出張していたのか」「自分も今度ここ行ってみよう」など、部署を超えた交流のきっかけになります。さらに、営業部門の地道な移動や努力を可視化して共有する場にもなるため、社員のモチベーション維持にも効果があります。

全国各地での“出張めし”を語る動画は、ただのグルメ紹介にとどまりません。そこには、営業担当者のリアルな足跡、土地との接点、そして働く人の個性がにじみ出ます。
企業の動画に「人の気配」を加えたいなら、まずはスマホ片手にごはんを語るところから。地図でつなぐ「全国出張めしマップ」は、社外にも社内にも届く、地に足のついたコンテンツになり得ます。